第36回半世紀を経て届いた父のラブレター 最期まで手放さなかった母の思い

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角谷陽子
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 「お父さんの手紙が出てきてん」

 母が言った。

 少し声が弾んでいる。

 お父さん、つまり私の父は16年前にがんで亡くなっている。

 それから一人、石川県七尾市の自宅で母は暮らしてきた。

 その家は、2024年元日の能登半島地震で揺れた。

 私は大みそかを七尾で過ごし、大阪の自宅に向かう列車にいた。

 母の携帯にかけたが、つながらない。もう一度かけて、母が出た時はほっとした。

 「家の中はかちゃかちゃ(めちゃくちゃ)や。でも、近所の人と避難して大丈夫」と言う。

 「七尾に戻ろうか」と聞くが、がんとして「1人で大丈夫、大阪帰って」という。

 母は言い出したらきかない。私はいったん大阪に戻ることにした。

 3週間後、大阪から七尾まで直通特急が再開した。簡易トイレをリュックに詰め込み、見舞いに行った。

 古い木造2階建ての家は、かろうじて立ってはいたが、1階の外壁がすべて倒れていた。

意外な場所に眠っていた手紙

 郵便ポストなどというしゃれたものはなく、手紙は、住宅の壁に直接埋め込んだ郵便受け口から家の中に投げ込まれる仕組みだった。

 父の手紙はどういうわけか、壁の内部の隙間にはさまっていた。

 気づかれないまま時が経ち…

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能登半島地震(2024年)

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