第4回コロナ禍の学生、体感速度は2.5倍速 心理的時間を充実させるには

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島田祥輔
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【ニュートンから】時間心理学(4)

 子供のほうが1年を長く感じる理由として,第1回では代謝の観点から説明したが,体験する出来事の数の影響もあると考えられる。子供にとっての日常は,学校で新しいことを学ぶ,新しい友達ができる,はじめての場所で遊ぶといったように,新しく体験する出来事の数や種類が多い。一方で,大人は似たような仕事をくりかえし,通勤ルートもほとんど変わらないため,新しく体験する出来事の数が少なくなり,時間を短く感じてしまう。

 体験する出来事の数と心理的時間の関係は,コロナ禍で如実にあらわれている。一川教授が監修したアンケート調査(セイコー時間白書2021)では,2019年以前に感じていた1年の時間の速度を1倍速だとすると,コロナ禍がはじまった2020年の体感速度は平均で約2倍にもなったという。とくに,10代では約2.66倍,学生では約2.57倍という結果だった。

 本来,10代や学生では学校行事などでさまざまな出来事を体験する機会がある。しかし,コロナ禍でイベントが中止・延期になったことで体験の機会が大きく減り,1年があっという間に終わったと感じた人が多いようだ。

 大人でも時間を長くゆっくりと感じるためには,体験する出来事の数をふやせばよいのだが,いそがしくて新しいことをはじめる余裕がないという人もいるかもしれない。千葉大学で心理学を専門に研究する一川誠教授らの研究によると,時間の長さの感じ方は,体験した出来事の数そのものではなく,出来事を体験する際に心にかかる負荷によって決まるという。

 一川教授らは,実験で,アルファベットまたは数字が画面に0.1秒ずつ連続で表示される映像を参加者に見せた(Ichikawa & Miyoshi, i-Perception. 2020;11(6):1-18)。そして,17~20コマの中に最大2コマかくれている数字を参加者がみつけられるかどうかと,そのときに参加者が感じた時間の長さを評価した。

 その結果,数字を2個ともみ…

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2025年4月22日12時5分 投稿
    【視点】

    この連載はとても面白い。時間を長く感じたり、短く感じたりする経験はおそらく誰にもあって、私はラグビー選手時代にそれを感じていた。前後半を合わせて80分、それにハーフタイムの10分とプレーが途切れる時間やインジュアリータイムを足しての約100

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    板倉龍
    (科学雑誌Newton編集部長)
    2025年4月22日15時1分 投稿
    【視点】

    科学雑誌Newtonに掲載された記事を月替わりの連載形式でお届けする【ニュートンから】。4月のテーマは「時間心理学」で,今回はその最終回です。千葉大学の一川誠教授に取材して,時間心理学に関する最新の研究動向や,心理的時間をコントロールするた

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