働き手激減「8がけ社会」の突破口を探る 炭鉱の街が踏み出した一歩

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石松恒
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 日本の高齢化率が35%に迫る2040年、働き手の中心となる現役世代(生産年齢人口の15~64歳)は1200万人減る。今の2割近くがいなくなる「8がけ社会」は遠い未来の話ではなく、すでに地域を揺さぶっている。

 問題の本質や突破口はどこにあるのか。

 今年1月に朝日新聞で展開した連載「8がけ社会」を通じてたどり着いた「答え」を持って現場を訪ねた。

連載「8がけ社会」

齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。今までの「当たり前」が通用しなくなる未来を私たちはどう生きるべきでしょうか。専門家の力も借りながら、解決に向けた糸口を考えます。

 福岡県最南部の大牟田市は、かつて炭鉱で栄えた場所だ。

 市の人口は昭和30年代にピークの20万人を突破したが、その後は減少し、10万6千人(今年2月現在)まで下降した。傾向はこの先も変わらず、2040年には8万人強になるとみられている。まさに、8がけ社会への移行が進む。

 その街で、連載で協力してくれたリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員が招かれ、今後の労働力不足を考えるイベントが2月16、17日に開かれると聞き、同行した。

 「介護崩壊は寸前。いや、すでに事実上崩壊しているのかもしれない」

 イベントを前に古屋さんと、介護や高齢者の相談を受ける地域包括支援センターを訪ねると、担当者が現状を打ち明けた。

 在宅介護を担うヘルパーと、介護保険を使うためのケアプランを作るケアマネジャーが足りず、サービスを受けるまで相当な時間がかかる。

 それでも、一刻も早くサービスを利用したい当事者と家族のために、片っ端から介護事業所に電話し、空きを探すのが日常化しているという。

市役所さえも人材の争奪戦

 人手不足は介護の分野だけではない。

 問題の深刻さを痛感したのが…

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この記事を書いた人
石松恒
ネットワーク報道本部兼政治部次長|連載「8がけ社会」担当
専門・関心分野
国内政治、選挙、民主主義、人口減少
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    大川千寿
    (神奈川大学法学部教授)
    2024年3月7日17時2分 投稿
    【視点】

    「民主主義は、今を生きる国民は代表するが、未来の世代の代表者がいない」。確かにその問題があります。しかし、そもそも「いまの政治家が自分たちを代表しているとは思わない」という問いに「はい」と答える有権者も相当数に及びます。 私たちも直近

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  • commentatorHeader
    浜田陽太郎
    (朝日新聞記者=社会保障、定年後)
    2024年3月7日16時0分 投稿
    【視点】

    この記事の筆者は、「8がけ社会」という企画を統括したデスクです。チームは比較的若い世代の記者が中心ですが、還暦近い私もオジサン(オジイサン?)記者として交ぜてもらいました(デスクより11歳も年寄りです)。人口減少という巨大なテーマに立ち向か

    …続きを読む