静寂の中響くのは 永瀬正敏が撮った愛知(313)
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回も愛知での一枚。撮影のなかのとても好きな時間とは?

鬼師の方を愛知県高浜市で撮影させていただいた。
前回いきなり目の色が変わった話を書かせていただいたが、
それはどの職人さんでも一緒だ。
写真撮影のためとはいえ、やはり制作に向かわれると、
途端に眼光鋭くなり、無言になられる。
静寂の中響くのは、使われる道具の音と、
シャッター音だけ。
その時間が僕はとても好きだ。
以前書いたと思うが、うちの祖父は写真館を営む“写真師”だった。
もちろん無名の街の写真館のオヤジ。
でも彼が亡くなってから随分経って、
当時あまり写真を撮る方や、教えてもらえる方が少なかった状況で、
ひとり、長い時間をかけ実験しながら、
どうすれば撮影した方に喜んでいただけるか、
切磋琢磨していた過程を記録したノートを発見した。
それを見て、自分の中のもの、写真に対する向き合い方が、
僕はかなり変わった。
なので一つの作品に真摯(しんし)に向き合っていらっしゃる皆さんに、
リスペクトを持ってお会いしたいと思う。
まだまだ色んな職人さんの姿を、その作品を、
今後も撮影させていただきたいと思う。

鬼師さんや他の職人さんの制作に携わる瞬間を毎回、見る事が出来るのも写真師だったお祖父様の想いなどを引き継いでいる永瀬さんのおかげですね、ありがとうございます!
お祖父様も研究ノートを永瀬さんに見つけてもらって、その写真に向き合うお祖父様の真摯な思いも受けとめてもらって、きっと喜んでらっしゃいますね😊