旅立つ料理家の妻 皆で泣いて笑ったフェスのような日々

有料記事

[PR]

それぞれの最終楽章・レシピは永遠に(6)

会社員 小林一匡さん

 2018年秋、妻の舘野真知子(22年5月逝去、享年48)と僕は川崎市タワーマンションを離れて、神奈川県葉山町の古い平屋に引っ越しました。畑があり、海岸へも歩いて行ける。その1週間後、僕が心筋梗塞(こうそく)で倒れてしまいました。お互いの家族は遠方なので頼れずに心細かった時、近くに住む真知子の親友夫妻が僕の入院先へ駆けつけてくれました。本当にありがたかった。

 これを機に、僕らのように子どもがいない夫婦や独身者が、家族のように助け合える関係を地域で作りたいと思うようになりました。友だちに明かすと、同じように考える人たちがそばにいるという。数人が集まり、「葉山家族」と呼ぶ仲間ができました。20年夏以降、真知子が特製ソースを開発した期間限定のかき氷店「甘氷屋」を開いた際も、このメンバーが関わりました。

 葉山の自宅のキッチンには、真知子が自ら仕込んだみそなど、発酵食の容器が所狭しと並んでいました。居間では、うちの畑で採れた野菜を使うレシピを撮影したりメディアの取材を受けたり。テレビに出演する機会も多く、19年12月下旬のNHK「あさイチ」の料理コーナーではクリスマスにぴったりの「甘酒ローストビーフ」を紹介。甘酒入りのタレにつけて炊飯器で作るレシピは、安い肉ほどおいしくなるという真知子の自信作でした。

 真知子は約10年前に病気が…

この記事は有料記事です。残り978文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら