障害児が直面「18歳の壁」をなくせ 通所施設が山科にオープン

日比野容子
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 成人を機に、障害児がそれまで受けてきた支援を受けられなくなる「18歳の壁」。とりわけ重症心身障害児や医療的ケアが必要な子どもは深刻だ。こうした問題に一石を投じようと4月1日、京都市山科区に洛和ケアセンター「ととのう」が誕生した。子どもから大人まで切れ目ない支援をする通所施設で、全国的にも珍しいという。

 「こんな場所があればよいなと夢見てきた施設がようやくできました」

 こう語るのは、医療や福祉の分野で幅広く事業を手がける洛和会ヘルスケアシステム障がい福祉事業部の西村浪二(なみじ)部長だ。学生時代に、アートを通じて障害者の自立をめざす「奈良たんぽぽの会」(奈良市)の活動に携わって以来、障害者福祉に強い関心を寄せてきた。

 西村さんによると、障害児は日中は特別支援学校、夕方以降は放課後等デイサービスに通ってケアを受けるケースが多い。しかし、18歳になって特別支援学校を卒業すると、児童福祉法に基づくこうしたサービスは原則として使えなくなる。

 障害の程度が比較的軽く、障害者雇用などで就労できるケースは別として、常時ケアが必要な場合は、卒業後の新たな居場所を見つけなければならないという。

 「見つからなければ、親が子の面倒を見ざるを得ず、これまで通り働き続けるのが難しくなることもあります。たとえ見つかっても、子は子で新しい環境に慣れるのは大変で、18歳の節目は大きなピンチ。親と子の双方にとって大きな負担なんです」と西村さん。

 18歳になる前も、なった後も切れ目なく、慣れ親しんだ場所で慣れ親しんだサービスを受けてもらえるようにしたいと、洛和会は「訪問看護ステーション山科」などが入っていた建物の1階部分を約4千万円かけて大規模リニューアルした。

 ひとつの空間の中に、重症心身障害児や医療的ケア児向けの「重心型児童発達支援」と「重心型放課後等デイサービス」、そして、成人が利用できる「生活介護」と「就労継続支援B型」の計四つの施設を置いた。

 施設名の「ととのう」は、親も子も心身ともに安らぐことができる場にしたいとの願いから名付けたという。

 定員は子どもが7人、大人は生活介護9人、就労支援11人。スタッフは看護師や保育士ら専門職10人を配置する。

 障害福祉の受給者証を持っていれば居住地を問わず利用でき、京都市内だけでなく近隣の宇治市、大津市などからの通所も可能だ。

 西村さんは「小さな一歩だが、確かな一歩。『18歳の壁』という厳しい現実に風穴を開けていきたい」。2年ほど前から障害福祉事業に本格的に取り組み始めた洛和会の矢野裕典理事長は「すべての人が居場所を持ち、出番のある社会にするお手伝いをしていく」と話す。

 洛和会は、障害福祉全般に関する相談センター「こより」を立ち上げ、5日から専用電話(075・585・6166)も置く予定だ。当面は、洛和ライフケアわくわくやましな(075・582・8111)でも相談を受け付ける。

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この記事を書いた人
日比野容子
京都総局
専門・関心分野
オーバーツーリズム、歴史文化、医療・介護、クラシック音楽、スキー、料理、欧州事情など