第3回孤独死見越す44歳、就職氷河期なお重しに 未練わく夜に抱くものは

有料記事

田添聖史
[PR]

 仕事を終えた金曜日の夜、いつも通り自宅で一人の夕食をとる。午後9時にスマホが鳴り、LINEのメッセージが届いた。

 「お元気ですか?」

 メッセージの下に表示された「OK」をタップすると、まもなく自動送信の返事が届く。

 「ご連絡ありがとうございます」

 それを見て、やりとりは終わる。「OKと言えることはほとんどないけど、なんとか生きているし」。いつも、そんなことを思う。

 千葉県に住む44歳のエミさんは昨年10月、NPO法人「エンリッチ」(東京都江戸川区)が無料で提供する見守りサービスの利用を始めた。

 孤独死を防ぐため、一定の頻度でLINEに安否確認のメッセージが届き、反応がなければ、利用者本人に直接電話が来たり親族らに通知が届いたりする仕組みだ。利用者同士で見守りをする有料サービスもある。

警察庁は昨年、全国の「孤独死」の統計を初めて公表しました。1~6月は3万7227人。生産年齢人口(15~64歳)の「現役世代」が23.7%(8826人)を占め、高齢者に限った問題ではない実態が浮かびました。44歳のエミさんは、なぜ見守りサービスの利用を始めたのでしょうか。その理由や、どのような思いで日常を送っているのか取材しました。

 エミさんは図書館司書の仕事を続けて20年になる。非正規雇用で月収は15万円弱。小説を書くウェブライターの副業を合わせても「ワーキングプア」(働く貧困層)の境界線とされる年収約200万円には届かない。

 仕事を除けば、日常的に顔を合わせる人はいない。職場の同僚とも世間話をする程度の希薄な関係性。家族とも疎遠だ。

ネットニュースで見かけた言葉

 昨年初めに大きな手術を経験…

この記事は有料記事です。残り2156文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    藤田直哉
    (批評家・日本映画大学准教授)
    2025年2月9日7時0分 投稿
    【提案】

    就職氷河期世代の苦境について、ケアがもっと必要だと思います。統計を見れば分かるように、ある年代に生まれたからという理由だけで、就職率、生涯年収や社会的地位が変わり、それと相関するような恋愛や結婚、出産や家族形成に差が出るということは、「不公

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    伊藤昌亮
    (成蹊大学文学部現代社会学科教授)
    2025年2月9日7時0分 投稿
    【視点】

    「孤独死」という言葉が普及するきっかけとなったのは、2010年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「無縁社会」でした。「行旅死亡人」(引き取り手がいない死者)の生い立ちを丁寧にたどっていくこの番組は、彼ら彼女らがごく普通の人たちだったこ

    …続きを読む