タワマンの街・武蔵小杉で町内会が解散へ 人口増でも「地域の崩壊」

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稲石俊章
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 タワーマンションが林立する川崎市中原区武蔵小杉駅近くの町内会が、3月末で解散する。町内の人口は15年で2.5倍に増えたのに、会員が激減したからだという。いったい何が起きているのか。

 1月3日、JR南武線の高架下にある小杉町3丁目町会会館で獅子舞が披露され、町会としては最後の舞に親子連れなど約50人が集まった。

 町会長の五十嵐俊男さん(81)はこうつぶやいた。「この中には町会の子はほとんどいないんだよな」

タワマンが3棟、人口は2.5倍に

 武蔵小杉駅の南西にある小杉町3丁目には区役所や警察署、郵便局などが並ぶ。

 市によると、2009年に2214人だった町内の人口は、24年に約2.5倍の5508人に増えた。駅周辺の再開発で高さ140~160メートルのタワマンが3棟(計約1400戸)できたためだ。

 一方、町会の会員はかつての850世帯から650世帯に減った。このうち半分ほどは、入居世帯すべてが会員になる古いマンションの住民で、町会活動に関わることはほとんどない。事実上退会している商店などもあって、実際の会員はもっと少ないという。

 五十嵐さんによると、戸建て住宅は30戸を割り、町工場も1カ所だけ。タワマンの住民で会員になっているのは10世帯程度。主に以前から町内に住んでいた人たちだという。

 こうした中、町会が開いていた盆踊りは10年以上前から実施できなくなった。新型コロナが流行する前後には、神社のお祭りなどに出す子どもみこしや地域の清掃、防犯パトロールなども中止。活動の縮小を受け、会費の徴収をやめた。

「いつか引き継いで」と願ったが

 一方、現在も活動が続くのは…

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    佐倉統
    (実践女子大学教授=科学技術社会論)
    2025年2月4日9時0分 投稿
    【視点】

    町内会はいらない。必要な機能は災害時の互助と伝統芸能の保存ぐらいではないか。ならばそれぞれを目的としたボランティア活動があれば十分で、普段から回覧板を回したり、よくわからない募金を集めたりする必要はない。人々の生活形態や価値観が多様化してい

    …続きを読む
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    富永京子
    (立命館大学准教授=社会運動論)
    2025年2月4日13時7分 投稿
    【視点】

    労働組合をはじめとした中間集団を研究していますが、佐倉先生がおっしゃるような「回覧板を回したり、よくわからない募金を集めたりする必要はない。必要な機能は防災機能と伝統芸能の保存ぐらいではないか」という意見はよく聞きます。同じ意見を持たれてい

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