米大学で相次ぐ留学生たちの拘束 情報「洪水」戦略に溺れないために

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ライター・望月優大=寄稿
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Re:Ron連載「望月優大 アメリカの観察」第2回

 第2次トランプ政権の特徴を最もよく表す言葉を一つ選ぶとすれば、「フラッド・ザ・ゾーン(Flood the Zone)」かもしれない。

 第1次政権の初期にホワイトハウスに入ったスティーブン・バノンは、2018年に作家のマイケル・ルイスに対してこう語ったと言われる。「民主党は重要ではない。本当の敵(opponent)はメディアだ。そして彼らに対処する方法はクソでその場をいっぱいにすることだ(flood the zone with shit)」

 短期間で大量の政策を繰り出し、大統領や閣僚自身のアカウントも含めて膨大な発信を続ける。到底フォローしきれないほどの情報で「洪水」を作り出すことの目的は、受け手に理解させることではなく、溺れさせることだ。そこでは、広報や情報発信の意味が逆転している。バイデン政権の4年間を使い、用意周到に準備し直された「フラッド・ザ・ゾーン」戦略は、第2次政権の開始直後からより強力な形で実行されているようだ。

 この連載には「アメリカの観察」という題をつけた。重要なことに、何かを観察するには時間も労力もかかる。日々の忙しさの中で、多くの力を観察に割くのはなかなか難しいことだ。戦略としての「フラッド・ザ・ゾーン」は、元々高いこの「観察のコスト」をさらに上げようとする。人間は溺れやすい。そして、意図的に溺れさせるのはそれほど難しくない。

「最初の一人」トランプ氏の言葉が現実に

 3月に入って以降、アメリカ各地の大学で、移民税関捜査局(ICE)による留学生などの拘束が相次いでいる。それこそ、一つひとつの報道を追いきれないほどのスピード感だ。

 トランプ大統領は1月の就任当初からアメリカでの滞在資格を持たない非正規移民の排除を強力に推進してきた。だがその後、政権の狙いはそこだけにとどまらず、永住権や学生ビザなど、何らかの滞在資格を持つ外国籍者への圧力も強めていることがわかってきた。

 特に懸念されているのが、留…

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