大阪万博に欠ける「お客さん目線」と東京五輪の影 東浩紀さんの直言
そもそも何のために、何をやるのか――。来年4月に始まる大阪・関西万博について、批評家の東浩紀さんは、理念や魅力を主催者側が人々に向けてしっかりと語らない現状を問題視します。背景に東京五輪をめぐる「ゴタゴタ」を挙げ、ある出来事で露呈した「お客さん目線」の欠如も指摘します。どうすればよいのでしょうか。
「抽象的でわかりにくい」
――開幕が近づいてきました。
ミャクミャク(公式キャラクター)の認知度だけは高いですが、国民側で盛り上がっているとは言い難いですね。東京ではポスターもあまり見かけず、話題も広がっていません。
広報戦略がつたないことは問題ですが、それ以前に決定的に欠けているのは、そもそも「何のために万博をやるのか」という理念を誰も語らず、「何をやるのか」という中身も十分に発信されていないことです。
――ホームページでは「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現に向け、いのちを知る・育む・守る・つむぐ・拡(ひろ)げる・高める・磨く・響き合わせるという8事業を8人のプロデューサーが展開するとうたわれています。
著名な人たちが並びますが、ホームページを見ても各事業の説明は抽象的でわかりにくいです。日本国際博覧会協会(万博協会)はチケットの売れ行きについて強気なようですが、中身がよくわからないのに買う人は限られていると思います。
「万博と五輪は大きく違う」
――東さんは主宰する「ゲンロンカフェ」で2月、万博誘致を主導した日本維新の会の参院議員で、大阪府・市の元特別顧問の猪瀬直樹さんと対談し、話題になりました。
猪瀬さんに開催理念を繰り返し問うても明確な答えは返ってこず、「では誰に聞けばわかるのか」と尋ねてもわからずじまいでした。大阪・関西にもたらされる経済効果を強調されても、他の地域の人には響きにくいでしょう。
東京五輪を引き合いに「開催すること自体が大事だ」とも繰り返し主張していましたが、五輪と万博には大きな違いがあります。
――どういうことでしょうか。
五輪は世界中の一流アスリー…
【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら
2025大阪・関西万博
2025年4月13日に大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)が開幕しました。関連のニュースをまとめています。[もっと見る]