第3回「いいね」で変わる政策 連合、玉木氏らに不満「SNSばかり見て」

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安倍龍太郎 南有紀
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 SNSを使った「世論調査」。それが国民民主党玉木雄一郎代表の日課だ。

 「いろんな政策を訴える。『いいね』が多い場合は残し、ウケたものを前に出していく」。SNSの反応に常に目をこらす「トレンドチェック」を欠かさない。

 ただ、SNSの反応に過敏になるあまり、党の主張が揺れ動いている。典型例が選択的夫婦別姓だ。昨秋の衆院選では「導入する」と公約していたが、最近は執行部の消極姿勢が目立つようになった。

 榛葉賀津也幹事長は4月25日の記者会見で「方針を修正したのか」と問われると、「いろんな価値観を見定めながら、国民の様々な意見を聞いて方向性を出す」と述べ、まずは与党が方針を示すべきだとの立場を示した。歯切れの良さが売りの榛葉氏だけに、あいまいな言い方が際立った。

衆院選後に「自民や維新の支持層が流れてきた」

 国民民主は2022年、立憲民主党など他の4野党とともに選択的夫婦別姓の導入に向けた民法改正案を衆院に提出。昨秋の衆院選期間中に朝日新聞と東京大学・谷口将紀研究室が実施した調査では、法制化について国民民主の当選者の86%が賛成派だった。

 ところが今は、立憲中心の賛成派との連携には後ろ向きだ。党や所属議員のSNSアカウントに「賛成するなら絶対に投票しない」「旧姓の通称使用の拡大でいい」など、導入に否定的な書き込みが相次いでいることなどが背景にある。

 いらだちを募らせるのが、最大の支持団体で、多くの産業別労働組合(産別)を束ねる連合だ。幹部の一人は「公約に掲げていたはずなのに。新しい支持者に遠慮している」。先月24日には芳野友子会長が玉木氏を訪ね、選択的夫婦別姓の早期実現を求めたが、玉木氏は「早期の実現が極めて重要」としつつ、「与野党を超えた幅広い合意をどのようにとるのかという戦略的なものになる」とかわした。

 党関係者は玉木氏らの慎重な物言いについて、「衆院選以降、自民党日本維新の会を支持してきた保守層の一部が流れてきているから」と説明する。導入に向けた新たな民法改正案を立憲が衆院に提出した4月30日、国民民主も今国会に独自法案を提出する方針を突然打ち出すなど、一線を画す姿勢が鮮明だ。

「選挙に勝って、調子に乗っている」

 また、昨年12月に党が公表…

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    中北浩爾
    (政治学者・中央大学法学部教授)
    2025年5月1日12時12分 投稿
    【視点】

    国民民主党の現在の支持基盤の軸足は、一つは玉木代表や榛葉幹事長が重視するようなネット世論、もう一つは連合の4産別です。両者は重なる部分もありますが、記事に書かれているように、大きな溝があります。 労働組合が強みとしているのは、対面の地道な組織活動です。最近の地方選挙でみられるように、国民民主党の候補がネットでバズってトップ当選ということが続くと、労働組合でも組織活動がおろそかになります。「今はいいけれども、中長期的にはマイナス」と語る国民民主党支持の産別の幹部は少なくありません。 記事が強調しているように、選択的夫婦別姓をはじめ、政策面での乖離も広がっています。「103万円の壁」についても、連合は国民民主党が主張する178万円ではなく、物価上昇分の10万円程度の引き上げでよいという立場でした。連合の基本的なスタンスは、持続可能な社会保障制度が重要であり、そのための安定財源である消費税は引き下げるべきではない。また、控除よりも給付が望ましく、控除を行うとしても所得控除ではなく税額控除がよいという考えです。この点では、立憲民主党の方に近いといえます。 それでも現在、国民民主党に勢いがあり、政党支持率が高く、選挙でも連戦連勝である以上、玉木代表に対する批判は、連合や国民民主党支持の4産別の間では封じ込められています。しかし、くすぶっていることも事実です。玉木代表は、ネット世論と連合4産別の間でバランスをとりつつ、細いロープを曲芸師のように渡り切ろうとしています。もちろん、その先にある目標は、玉木政権の樹立でしょう。 自民・公明両党が担ぐ形で玉木首相が誕生した場合、連合は国民民主党が与党、立憲民主党が野党の立場に分かれ、股裂き状態に陥ります。かつて村山内閣から橋本内閣にかけての自社さ政権の時期、社会党が与党、民社党が野党に分かれ、連合の政治活動は困難に陥りました。そこに戻りかねない。したがって、芳野会長は国民民主党の自公連立入りに反対してきました。 一方、自民党や公明党が欲しているのは、やがて縮むであろう玉木代表に対するネット世論の支持ではなく、強固な組織力を持つ連合の4産別です。「ハーメルンの笛吹き男」に連れられていった子どものように、4産別は自民党へと連れられて行ってしまうのでしょうか。そうなると、「政権交代可能な民主主義」という平成の政治改革の目標は、最終的に露と消えかねません。

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