「もう耐えられない」トランプ氏が突きつける国際経済システムの再編
米国が輸入品に高関税を課す「トランプ関税」に世界が振り回されています。ただ、「TPP亡国論」などの著書で知られる評論家の中野剛志さんは「米国市場を失うという目先の問題だけではない」と指摘します。トランプ米大統領が狙うのは「国際経済システムの一方的な再編だ」とし、その流れは止められないといいます。
――トランプ政権の関税政策をどう見ますか。
「今回の関税は全世界に課されている点が重要です。とくに中国にはやたら高い税率になっている。日米の二国間の貿易摩擦ではないということです。米国市場を失った世界中の製品が、他国に流れ込みます。デフレ(物価下落)圧力が強まり、米国以外の国どうしで、市場の奪い合いや貿易戦争、関税合戦が勃発するリスクがあります」
記事のポイント
トランプ関税の本質的な目的は、①ドル安と②関税収入による米国内の減税にあると指摘。③日本が「非関税障壁」をなくしても、関税引き下げにはつながらないといいます。トランプ氏がいなくなっても「アメリカ・ファースト」に向かう流れは避けられない、とも言及しています。
――トランプ関税の背景には何がありますか。
「米国は世界中から一方的に大量の製品を輸入し続け、その結果、貿易赤字、経常収支の赤字を抱えてきました。日本も外需頼みで、米国に依存する国際経済システムに甘えてきた。その結果、『グローバルインバランス』(世界経済の不均衡)という問題が生じました。それに米国自身が『もう耐えられない』と言っている。従来の二国間の交渉の枠組みとは全く違う対応が必要で、国際協調による大規模な財政出動で内需を拡大し、報復関税の自制を呼びかける必要があります」
避けられぬグローバル経済の崩壊
――各国が米国との交渉に奔走しています。
「トランプ関税の本質的な目…