暗闇でお香水くみあげ 「お水取り」由来の秘技厳かに 東大寺修二会
向井光真
奈良市の東大寺二月堂で行われている修二会(しゅにえ)(お水取り)で13日未明、こもり僧の「練行衆(れんぎょうしゅう)」らが本尊の十一面観音に供える神聖な「香水(こうずい)」を井戸からくみ上げ、堂内へ運び込む儀式があった。修二会を「お水取り」と呼ぶ由来となった儀式だ。
午前1時40分ごろ、雅楽が奏でられる中、密教や神道の儀式を担う咒師(しゅし)の上野周真・真言院住職ら練行衆6人が、松明(たいまつ)で照らされた石段を下り、二月堂下の建物「閼伽井屋(あかいや)」に向かった。
建物内には神聖な「香水」がわく「若狭井」がある。若狭井から香水をくむ行為は秘儀とされており、咒師らが中に入って香水をくみ上げ、二月堂まで3往復して運んだ。暗闇の中で執り行われた厳かな儀式を参拝客たちは見守っていた。
「お水取り」の儀式には、修二会が始まった奈良時代、全国各地の神々が法会に招かれたが、釣りをしていて遅れた若狭(現・福井県)の遠敷(おにゅう)明神がおわびとして、若狭から霊水を送り、二月堂のそばに清水を湧き出させたという伝承がある。