5年前の甲子園で誰も予想しなかった 無名選手が道を開いた米国留学
「こちらからの提案というか、相談なんですけど……」
取材の冒頭、大山盛一郎(じょういちろう)は切り出した。
「もし、今回指名がなくても、記事で取り上げていただくことはできませんか? 自分みたいな道もあるんだよっていうのを、日本の高校生に知ってもらえるいい機会だと思うので」
プロ野球のドラフト会議を約1週間後に控えた、10月20日のことだった。
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「高校までは本当になにもなくて、目立たない選手だった」という二塁手は、異国の地で日米のドラフト候補に挙げられるまでになった。
今年8月28日、大山は日本に一時帰国していた。プロ野球のある球団が彼ひとりのための入団テストを行ったのだ。
身長170センチと小柄だが、左打席から左右に鋭いライナーを打ち分ける。甘い球は右翼席後方のネットに特大弾を突き刺した。
「緊張している様子がない。楽しそうに笑っている。たいしたもんです」。見守った球団スタッフが感心したように言った。
その話を伝えると、大山は笑った。
「高校までは完璧を求めすぎて、気持ちの浮き沈みがありました。でも今は違う。ベストのスイングをして、結果がアウトなら仕方ない。これもアメリカで変わりましたね」
沖縄・興南高では2018年夏の甲子園に出場した。1学年下に宮城大弥(オリックス)がいた。
大山はケガもあり、試合に出られなかった。プロはもちろん、大学や社会人から声をかけられることもなかった。
そんな高校3年生のとき、雑…