朝5時、段ボール集める老後 大丈夫?声かける39歳 韓国の貧困
韓国の街中で時折見かけるのが、廃品の段ボールなどを集めて歩くお年寄りだ。業者に売ってわずかな収入を得るその姿は「高齢者の貧困問題の象徴」とも言われている。
経済は急速に成長したものの、年金など「老後の支え」となる社会保障の充実が後回しになってきた韓国。平均寿命が83歳を超えた世界有数の長寿社会の一つの断面だ。
いなだ・きよひで 経済部、オピニオン編集部、国際報道部などを経て5月から2度目のソウル。休日にはふらり街歩きが楽しみ。
平日の朝、ソウル市内のリサイクル業者が廃棄物を引き取る施設を訪ねた。高齢者らが道ばたなどで集めた段ボールや古紙などを売りに来る。大量の段ボールを積んだリヤカーを引いてくる人もいる。
市内で1人で暮らす女性(76)もここを利用している。夫と離婚し、家族はいない。若いころは食堂で働いたが、年を重ねると雇ってもらえなくなった。段ボールなどを集め始めて20年ほどになる。「この年でもできる仕事は、ほかにない」と言う。
この日は朝4時半に家を出た。出遅れると、他の人たちに先に回収されてしまう。必死だが、足の痛みなどで歩き回れる時間にも限界がある。毎月の収入は10万ウォン(約1万円)ほど。年金とあわせても40万ウォンに届かない。
年金はほぼ家賃に消え、福祉団体などが無料で提供する給食を頼ってなお、ギリギリの生活だ。それでも「家でじっとしていても体中が痛む。外で段ボールを集め、人の様子を見ていると忘れられる」と淡々と言う。
韓国政府は、段ボールや古紙などの収集をなりわいに生きる高齢者が全国に7万人近くいると推計している。ただ実態は十分につかみきれておらず、実際はもっと多いとの見方もある。
特別な技術や経験がなくても始められるが、ひと月当たりの収入は平均で20万ウォン程度という。極度の貧困で食事にも事欠いたり、体の調子が悪くても医者に行けなかったりする人が珍しくない。リヤカーを引いて道路を歩き、交通事故のリスクも高いと指摘される。
経済成長「漢江の奇跡」 年金は後回しに
韓国の1960年代後半以降…
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- 【視点】
韓国という国は、日本と比べものにならないくらいに早く大きく変化する。政治的、経済的に変化せざるをえない状況にあり、結果として社会は、おおむねそれに順応してきた。 韓国では、高度成長が日本より遅く始まった。いまの中高年層以上には、驚くよ
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