外国人も投票・出馬するフィンランドの「当たり前」 日常にある政治

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■朴沙羅さんの欧州季評

 4月13日、フィンランド地方選挙が行われる。18歳に達しており、フィンランド、EU(欧州連合)加盟国、アイスランド、ノルウェーの国籍を持つ住民、また他の国籍で2年以上継続してフィンランドに住む住民が、選挙権・被選挙権を持つ。国政選挙や大統領選挙と異なり、フィンランド国籍のない外国人も出馬や投票ができる。

 私にも投票案内が郵送されてきた。当日近所の小学校で投票するか、期日前投票もできる。候補者には番号が割り当てられており、投票用紙に印刷された円の中に選んだ人の番号を書く。

 選挙結果の決定方式は、ドント方式と呼ばれるものだ。詳細は省くが、日本の参議院比例区の方式に近い。ただ、参院比例では政党名での投票もできるのに対し、候補者の番号のみを書く。結果として候補者に与える政党の影響はそれほど大きくない。

 日本の地方選挙との違いはそれだけではないように感じる。まず候補者の数がとても多いので、投票先を決めるのが大変だ。2021年の地方選挙ではヘルシンキだけで1163人が立候補した。私は選挙マッチングサイトを使うほか、なるべく候補者のイベントに行きパンフレットを読むことにした。サイトでは意外な政党の候補者と最もマッチしたので、政党に対する思い込みはよくないとわかった。

 地方議員には報酬が支払われるが給与はない。そのため他の業種で生計を立てながら議員として活動する人がほとんどだ。前の選挙では身近な人が候補者になっていたことがあった。

 何より、私のような外国籍者であっても投票できることは大きな違いだ。ただし、出身国や使用言語により異なるものの、総じてフィンランド国籍者と比べると外国人の投票率は低い。政治において、外国にルーツを持つ人々は、投票、候補者擁立、議員としての職務を含め、不平等にしか代表されていない。フィンランド法務省は、移民や他の言語の話者が、直接民主主義的な活動への参加が少ない状況を「民主主義の赤字」と表現した。公用語以外の情報が不足しているため、候補者の政策や人となりを知るのは難しく、誰に投票すればいいかも見当がつきにくい。私も選挙前の1カ月は毎日のように候補者のチラシをもらったが、ほぼすべてフィンランド語だった。

 この「赤字」を埋めるために…

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    鈴木江理子
    (国士舘大学教授=移民政策)
    2025年4月10日9時54分 投稿
    【視点】

    日本では、外国人の参政権は認められていない。  1995年の最高裁判決をうけて、1998年10月以降、数度にわたり国会に外国人地方選挙権(参政権)法案が提出されたものの、継続審議・廃案が続き、いまだ実現していない。2010年以降は法案すら提

    …続きを読む