尹錫悦氏罷免でどうなる東アジア安保 谷野作太郎氏が語る日韓の課題

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聞き手・牧野愛博
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 韓国の憲法裁判所は4日、裁判官の全員一致で尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の罷免を宣告しました。全斗煥(チョンドゥファン)政権時代の1984年5月から87年1月まで在韓国日本大使館の首席公使として勤務した谷野作太郎元中国大使は「日韓は更に協力し、トランプ米政権などの不確実性に備えるべきだ」と語ります。

 ――憲法裁判所の判断をどう評価しますか。

 尹氏が布告した非常戒厳には問題が多く、罷免は予想された結果だと思いますが、今後の韓国内が社会・政治の分断がひどくならないか心配です。対日関係がどうなっていくかについても、不安を感じます。

 韓国は60日以内に大統領選を迎えますが、世界秩序が液状化しつつあるなか、一刻も早くリーダーシップを持つ新大統領の誕生が待たれます。

 ――非常戒厳を巡る韓国内の混乱についてどうみていましたか。

 東アジアの安全保障環境が厳しさを増し、米国が自国第一主義に突き進むなか、韓国で指導者不在の状況が長く続いていることを大変心配しています。トランプ米大統領は最近、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記との「個人的な信頼関係」を誇示してはばかりません。韓国を脇に置いたまま、トランプ氏がどのような「ディール」に踏み切るのかという心配もあります。

 国際社会で不確実性が増すなか、トランプ氏はむしろそれをもてあそび、高関税政策などを通じて自らの力にしようとしているようにも見えます。

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 ――韓国の政治の分断をどう…

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この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島
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    西野純也
    (慶應義塾大学教授・東アジア研究所長)
    2025年4月4日15時9分 投稿
    【視点】

    日韓関係の「肝」は経済だ、との見方に同意します。1965年の国交正常化の際も、それ以降も、日韓関係を牽引してきたのは経済協力でした。ただし、それは日韓の経済力の差を前提とした日本の対韓経済協力が中心でした。ところが現在は日韓の経済力が接近し

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