ベトナムの「竹外交」、「世界で最も多くの戦争を経験した国」の知恵

有料記事

ハノイ=牧野愛博
[PR]

 4月30日はベトナム戦争終結50周年です。日越両国は米国と戦いましたが、戦後の日本は日米同盟を、ベトナムは自主独立路線をそれぞれ選びました。ベトナム戦略研究・国際関係開発センター所長のグエン・マン・フン博士(国際関係)は個人の考えとしたうえで、「日本とベトナムは歴史も背景も異なるため、一概にどちらが良いとは言えない」と語ります。

 ――ベトナムと米国は戦後、緊密な関係を築きました。

 米越関係は1995年に正常化し、2023年9月にはバイデン米大統領(当時)が訪越して、両国の関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げしました。ベトナム戦争では多くの人が亡くなり、戦後もベトナムでは枯れ葉剤による後遺症が、米国でも行方不明米軍兵士問題が、それぞれ残りましたが、お互いに解決に向けて努力してきました。現在、両国は気候変動のように利益が一致する問題で協力しています。

 ――「竹外交」と呼ばれるベトナム外交の特徴を教えてください。

 三つの特徴があります。第一は「竹は根が丈夫」という点です。「竹外交の根」とは民族の利益を第一に考えるということです。第二に「竹の幹もしっかりしている」という点です。ベトナム外交は独立、自主、平和、共同発展という方針を掲げました。ドイモイ(1986年からのベトナムの市場経済導入政策)以降、この路線は変わっていません。第三に「竹の枝はしなやか」という点です。民族利益第一主義と自主独立などの路線は守りながら、柔軟な外交を展開します。これは、(都度、態度を変えて力の強い側につくという)機会主義とは異なります。

 ――経済がグローバル化した現代で、竹外交は効果を発揮しそうです。

 現在、(思想信条が異なる)陣営同士がデカップリング(分離)することは容易ではありません。ベトナムは民族利益第一主義を掲げて米中ロ3大国との関係をつくります。特定の国は選びません。だから、2023年から24年にかけ、3カ国の大統領や国家主席がベトナムを訪問したのだと思います。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ340人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

■「ベトナムとスイスは違う」…

この記事は有料記事です。残り1322文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
牧野愛博
専門記者|外交担当
専門・関心分野
外交、安全保障、朝鮮半島