第2回父から子へ、受け継がれた「ガチペルー料理」 日系移民の胃袋つかむ
群馬県伊勢崎市のJR伊勢崎駅から歩いて約15分。鮮やかなサーモンピンク色の外観の店のドアを開くと、陽気なBGMとともにスペイン語が聞こえてくる。
「Buenas tardes(こんばんは)」「¡Gracias, chao!(ありがとう、またね)」
1月下旬、ペルー料理店「El Kero(エル・ケーロ)」は、日本人客に加え、ペルー出身の夫婦や家族連れでにぎわっていた。客のテーブルには、ペルーを代表する料理の「セビーチェ」(魚介のマリネ)など、色とりどりの料理が並ぶ。
「エル・ケーロには好きな料理がたくさんある。私たちの国を思い出すんだ」。この日訪れたペルー出身のアレハンドロさん(56)はそう語った。伊勢崎市に隣接する埼玉県本庄市から妻のセシリアさんとよく通うという。セシリアさんも「ペルーとは種類が違う野菜を使うものもあるけれど、故郷の味と同じ」と語る。
店を育てたのは現オーナーの幸地(こうち)アキノリさん(35)の父、アンドレスさん(66)だ。アンドレスさんはペルーで生まれ育ったが、1990年ごろ、日本での仕事を求めて、「デカセギ」の一人として群馬県に移り住んだ。
連載「異国食堂 ガチグルメ in Japan」
エル・ケーロが「ガチペルー料理が食べられる店」として広がっていったのは、ひとつの料理がきっかけでした。その味は、父から子へ受け継がれていきます。記事後半では、日本の南米コミュニティーの現状について、識者の解説をもとに紹介します。
最初は桐生市の工場に勤めて…