「鉄腕アトム」演出した83歳が描く青春 手塚治虫文化賞マンガ大賞
小原篤
マンガ文化に大きな足跡を残した手塚治虫の業績を記念する第29回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)。昨年刊行・発表された作品のうち、最も優れた作品に贈るマンガ大賞は、りんたろうさんの「1秒24コマのぼくの人生」(河出書房新社)に決まった。
「手塚さんは偉大なマンガ家ですが、僕にとっては、一緒になって寝ずに『アトム』を作ったスタッフのチーフなんです」
映画「銀河鉄道999」「幻魔大戦」「メトロポリス」などで知られるアニメ監督。日仏合作を手がけた縁から仏で自伝アニメの企画が持ち上がり、仏語圏の出版社から自伝マンガを出す形で結実した。6年かけた作品の、これは日本語版。
「怖いもの知らずで引き受けたけど、描き始めると人生のいろんな光景が回り灯籠(どうろう)のようによみがえってくる。匂いや音や、風の感触まで。楽しい経験でした」
敗戦直後の新宿をうろついていた少年は、テレビアニメ「鉄腕アトム」でアニメーターから演出に転向、父の夢でもあった映画に情熱を注ぐ。本書は光と影の濃い青春記であり、貴重な時代の証言でもある。
3度会った「マンガの神様」
マンガ大賞へのノミネートを…