相互関税「影響、予測できぬ」 広島県内から米国へ輸出6500億円
トランプ米大統領が世界各国・地域に相互関税を発動すると表明した。日本企業が生産拠点を持つ東南アジアからの輸出品にも、高関税がかけられる。広島県内でも自動車産業を中心に様々な企業に影響が出そうだ。
「課税対象があまりに広範。どんな影響が出るか全く予測できない」。県内企業の輸出促進などを担う日本貿易振興機構(ジェトロ)の岡部光利・広島貿易情報センター所長は、驚きを隠さない。
トランプ氏は3月、日本から輸入する乗用車の関税を2.5%から27.5%に引き上げる追加関税の発動を命じる文書に署名した。今回の相互関税は自動車や鉄鋼などをのぞく輸入品が対象で、税率は24%になる。
岡部所長は、ベトナム46%、タイ36%、インドネシア32%といった東南アジア各国への相互関税の税率の高さに着目する。「日本のメーカーは東南アジアの工場で生産し、米国へ輸出するケースが多い。サプライチェーン全体の問題となる」と危機感を募らせる。
同センターが3月中旬に米国の関税対策をテーマに講演会を開いた際、参加企業の約9割がトランプ政権による政策の影響が「ある」「非常にある」と回答していた。
ひろぎんホールディングス(広島市中区)によると、県内から米国への昨年の輸出額は約6500億円。輸出額全体の約2割を占める。
相互関税の影響について、同ホールディングス経済産業調査部の下田稔グループ長は「企業の堅調な設備投資にブレーキをかけ、賃上げの流れにも水を差す。個人消費が一気に落ち込むリスクもある」と指摘する。県の湯崎英彦知事は「国や金融機関と連携して、どういうサポートができるか検討したい」と述べた。