第2回日本人夫婦の半数がセックスレス 「パパ、ママ」と呼ぶのはやめよう

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山本悠理 編集委員・岡崎明子
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 日本人夫婦の「2組に1組ほどがセックスレス」というデータがある。日本家族計画協会によると、20年で20ポイント近く増えた。なぜこんなに多いのか。会長で産婦人科医の北村邦夫さんに聞いた。

 ――半分がセックスレス状態、という結果は衝撃的です。

 私たちは20年以上にわたり、「男女の生活と意識に関する調査」として、家庭の性生活について調べてきました。

 日本性科学会によるセックスレス・カップルの定義は「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意した性交やセクシュアル・コンタクトがいずれも1カ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」です。

 私たちはそのうち、直接的な性交渉の有無について質問しています。

 2004年の調査では、性交渉が1カ月なかった割合は31.9%でしたが、右肩上がりに増え、23年には48.3%になりました。いまや2組に1組がセックスレスと言える状態にあるのです。

 ――なぜ、こんなに多いのでしょうか。

 セックスに積極的になれない理由として、男性は「仕事で疲れている」を挙げる人が多く、回答者の2~3割を占めていました。ただ、23年の調査で「相手が応じてくれない」を加えたところ、24.3%がこれを選び、最多となりました。

 女性は少し異なり、「面倒くさい」を挙げる人が多い傾向が続いています。「相手が応じてくれない」は2.8%にとどまりました。

 また、近年は、「仕事で疲れている」を挙げる女性が増えています。これまで13~19%台でしたが、23年には20.8%と初めて2割を超えました。注目すべきだと思います。

 ――疲れているから「面倒」なのでしょうか。

 社会進出に伴って外で働く女性が増えた一方、家事や育児、高齢家族の介護といった負担はそれほど減っていない。そうした中で、性交渉にまで労力を割きたくないという面もありそうです。

 家事や育児に非協力的な夫には愛情を持ちづらいという理由も考えられます。

 当事者にインタビューする機会もあります。

 印象的だったのは、性交渉を、お互いの関係を確かめ合うものではなく、「男の射精をうながすためのもの」と捉えている人が、男性でも女性でも少なからずいたことです。そんな物理的な面だけのとらえ方なら、確かに「面倒くさい」となっても不思議ではありません。

 ――ネットの発達で、アダルトコンテンツの視聴が容易になりました。こうした変化がセックスレスを加速させている面はありますか。

 ジェクスというコンドームメーカーと日本家族計画協会が12年から共同で行っている調査「ジェクス ジャパン・セックスサーベイ」では、男性側で特に、マスターベーションの際にアダルト動画を見ている割合が圧倒的に高いという状態が一貫して続いています。

 ただ、マスターベーションをするから性交渉の頻度が低くなる、というデータはありません。マスターベーションが多い人は、むしろ性交渉にも積極的という調査結果も出ました。

 ――セックスレス状態の夫婦が多い現状を、どう考えればいいでしょうか。

 善しあしは別として、日本は子どもに占める婚外子の割合が極めて低い社会です。性交渉がない夫婦が多いことは、少子化の進展とも密接に関わります。

 「出産後何となく」をセックスレスの理由として挙げる割合が、男女とも高いことも気になっています。調査結果を取材にきた外国の記者が、日本の家庭について「子どもが生まれると、お互いをパパ、ママと呼び合う光景が不思議だった」と言っていたのが印象的です。

 妊娠中、あるいは子どもが生まれた後でも、2人の関係を大事にしていくための性交渉をどうするか、お互いに話し合っていくべきだと思います。

 パパやママではなく名前で呼ぶ、意識して触れ合う、心地よい言葉をかけるなど、ささいなことでいいんです。私はよく、「心ときめく恋愛期間に立ち返ってみよう」という提案をしています。

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 きたむら・くにお 1951年、群馬県生まれ。産婦人科医、一般社団法人・日本家族計画協会会長。著書に「幸せのSEX」「セックス嫌いな若者たち」など。

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この記事を書いた人
山本悠理
デジタル企画報道部
専門・関心分野
現代詩、現代思想、演劇・演芸、法律学
岡崎明子
編集委員|イチ推しストーリー編集長
専門・関心分野
医療、生きづらさ、ジェンダー、働き方