池江璃花子さん、世界1位から突然のがん「逆境の中には希望が必要」

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聞き手・山内深紗子
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 センターレーンが好きです。

 3歳から泳ぎ始めて、高めの目標を立てては達成する。努力した分だけ記録は伸びて、気がつけば世界ランキング1位になっていました。

 そんな日常が大きく崩れたのは、2019年2月8日。白血病だと診断された時からでした。私はその直前までオーストラリアで合宿をしていました。階段を上がるのも息切れがするほど体調を崩し、緊急帰国して、その日のうちに検査を受け、仕事を終えて駆けつけた母と一緒に医師の説明を聞きました。

競泳選手の池江璃花子さん(24)は、昨年9月、白血病の症状が消えた「完全寛解」になりました。東京五輪の金メダル候補として期待されていた18歳での突然のがん経験。その後の生き方や、パリ五輪までの道のりにどのような影響があったのか、2月4日の世界対がんデーを前に率直に語ってくれました。ロングインタビュー動画とともにお届けします。

 「急性リンパ性白血病です」

 医師の言葉を私はすぐに理解できなかったけれど、抗がん剤治療をするので副作用で髪が抜ける、と説明された時に大泣きしました。

 不思議でした。病室に戻ると、「治すしかない」と平常心を取り戻していました。同時に、「これで五輪に出場しなくてよくなった」という思いが頭をよぎりました。

 16歳でリオデジャネイロ五輪に出場し、18年のアジア大会では6冠を達成し大会最優秀選手(MVP)に選ばれ、世界ランク1位に。20年予定されていた東京五輪での活躍を期待されていました。応援は大きな力ですが、これほどの重圧がかかっていたのだと、初めて自覚しました。

 「さらに強くなった池江璃花子の姿を見せられるよう頑張っていきたい」。すぐにSNSでメッセージとともに公表しました。「もう一度、泳ぐ」という覚悟でした。

「死にたい」 母に言った

 実際に治療が始まると、心身…

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この記事を書いた人
山内深紗子
デジタル企画報道部|言論サイトRe:Ron
専門・関心分野
子どもの貧困・虐待・がん・レジリエンス
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    小林恭子
    (在英ジャーナリスト)
    2025年2月4日0時0分 投稿
    【視点】

    素晴らしい、励まされる記事ですね。 世界ランキング1位になったスポーツ選手が白血病になって、でも「信じる力」で生き延びた・・という題名を読んで、「成功体験があるから、がんばれるのではないか」と思いました。 つまり、一度成功した人であれば

    …続きを読む
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2025年2月4日0時0分 投稿
    【視点】

    圧倒的なパフォーマンスで世界を席巻していた選手が、これまでの日常生活が失われるまでに突き落とされる。本人にしかわからない、どれだけ想像してもしきれない苦しみを抱えておられたことが、記事からは伝わってきました。その苦しみがいかほどのものだった

    …続きを読む