台風乗り越え 舞う「修正鬼会」 災害のない1年に

貞松慎二郎
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 国東半島(大分県)に根づく六郷満山文化を象徴する伝統行事「修正鬼会(しゅじょうおにえ)」(国指定重要無形民俗文化財)が1日に国東市の岩戸寺で、4日には豊後高田市の天念寺で執り行われた。僧侶が扮する鬼が、燃えさかるたいまつを手に暴れ回った。祭りや民俗芸能の取材をライフワークにしている記者の目線で、この行事の意義を考えた。

 修正鬼会は国東半島に点在する各寺院でさかんに行われていた行事だが、古くからの所作や規模を継承するのは今や3寺院だけに。「東組」は岩戸寺と成仏寺(国東市)が1年交代で、「西組」は天念寺が毎年開催。同じ行事でも、はやし言葉や風習などに違いがある。

 岩戸寺では降りしきる雨の中での開催となった。午後9時過ぎ、講堂に僧侶2人が扮する鬼が登場。介添え役とともに「オーニワヨー、ライショワヨ」とはやしながらたいまつを振り回し、前後左右へ舞う。

 続いて参拝者を囲むように輪を作り、ぐるぐると回る。参拝者の肩や背中をたいまつの下で軽くたたき、無病息災を願って「加持(かじ)」をする。鬼たちはこの後、地区の家々を回る東組の伝統で、寺を飛び出していった。

 天念寺では講堂に鬼が現れる前、僧侶と相対して参拝者に舞を体験してもらうなど和やかな場面もあった。鬼たちは「ホーレンショーヨ、ソラオンニワヨ」と声を張り上げて舞う。加持では参拝者1人ずつ腰のあたりをたいまつでたたき、保存会のメンバーには一段と力を込め、周囲から悲鳴が上がるほどだった。

 岩戸寺では地域の高齢化が進み、加勢の参加者を募り、これまでより早く終わるようにした。天念寺でも長さ約4メートルの大たいまつ3本の準備作業など、地区住民だけでは行事が成り立たなくなっている。

 国東半島は昨年8月末の台風10号で甚大な被害が出た。この地の人々にとって鬼は「福をもたらす存在」という。修正鬼会は春を迎える行事でもある。さんざん火の粉を浴びた帰り道、「災害のない穏やかな1年に」と願った。

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この記事を書いた人
貞松慎二郎
中津支局|主に大分県北部を担当
専門・関心分野
民俗芸能、伝統文化、風習