やまぬ逆風 「変わる」フジテレビを打ち出すために不可避なこと

有料記事

編集委員・後藤洋平
[PR]

 動画撮影なし、限られた記者のみを入れ、その質問の多くに対して「回答を控える」と繰り返した17日の会見から10日後。27日午後4時から翌日未明まで続いた異例の「やりなおし会見」には、直前に辞任が発表された港浩一社長と嘉納修治会長らが臨んだ。

 1回目の会見以降、強まる社内外からの批判、止まらないスポンサー離れといった強い逆風は、新たに就任する清水賢治社長の旗振りにより、弱めることはできるのか。現時点では、疑問と言わざるを得ない。

 23日に港社長や嘉納会長が出席したフジの社員説明会では怒号が飛び交い、悲痛な訴えが続出。営業部門の社員は「年間数百億円の売り上げに影響する状況」と訴えた。

 2023年6月に発生したとされる中居正広氏と女性とのトラブルについて、港社長や当時編成担当の専務だった大多亮・現関西テレビ社長らは同年8月に把握していた。にもかかわらず、社内のコンプライアンス部門にも問題を共有せず、中居氏をレギュラー番組だけでなく特番でも起用し続けた。

 この間、視聴者はもちろん、スポンサーにも一切報告がなかった。スポンサー企業の間でCMの見合わせが相次ぎ、ACジャパンのCMが流れる事態になった。慣例では企業によるACジャパンへの差し替えの場合はCM料金が支払われる。しかし今回は、スポンサーは次々と料金を支払わない態度を表明。詳細が明らかにされず、示談が成立しているトラブルを起因として、多数の広告主が足並みをそろえてフジ1局から撤退する状況は異様にも映る。

 だが、悪手が続くフジ側の対応を見れば、イメージが重視される広告業界においては必然の措置ともいえる。

 人権をめぐる状況も変わりつつある。国連人権理事会は2011年、「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択。企業に自らが引き起こす人権侵害のみならず、取引先の引き起こす問題についても、対応する責任があるとした。日本企業の間でも旧ジャニーズ問題をきっかけに人権問題への対応が加速した。

 テレビ業界ではもっか、1年…

この記事は有料記事です。残り781文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
後藤洋平
編集委員|ファッション・メディア・文化担当
専門・関心分野
ファッション、メディア、文化
  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2025年1月28日9時0分 投稿
    【視点】

    「日枝氏を含めての刷新が不可避なはず」そう、業界人を含め皆そう思って会見を注視していたが、結局「日枝氏を含めての具体的刷新を小理屈で回避する」ことを徹底した内容であり、逆に凄いなと感じた。強烈に印象的だったのは「誠意っぽさを盾とした現体制・

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    米重克洋
    (JX通信社 代表取締役)
    2025年1月28日10時6分 投稿
    【視点】

    フジサンケイグループの中核企業の不祥事だから、フジサンケイグループの「代表」の肩書きを今も持つ日枝氏に会見出席の要求が相次ぐのは自然だ。グループの中核企業の不祥事についてトップが説明責任を果たしていないわけで、批判を受けても仕方がない。この

    …続きを読む
フジテレビ問題

フジテレビ問題

元タレント中居正広さんと女性とのトラブルへの対応が問題視されているフジテレビ。事態は社長と会長の辞任に発展しました。フジ側は第三者委員会を立ち上げましたが、依然厳しい視線が注がれたままです。関連記事をまとめています。[もっと見る]