「女が格闘技なんて」 レジェンドの夢を阻んだ五輪の男女の壁

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後藤遼太
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 38年前、始めたばかりのレスリングの大会でいきなり優勝した。表彰台の一番上に立つうれしさは格別だった。人生で初めて手にしたトロフィーを抱えて家に帰ると、海外出張で留守がちだった父が居間で食事をしていた。

 ためらいつつ、「このタイミングなら」と思い切ってトロフィーを見せた。「優勝しちゃった」

 しばしの沈黙の後、「許した覚えはない」と一言だけ、返ってきた。

「女性は女性らしく。頼むから……」

 吉村祥子さん(55)は、高校3年の時から女子レスリングを始めた。プロレス好きの友人に誘われて、日本レスリング協会が開催した練習会に参加したことがきっかけだった。

 女子レスリングで初の国際大会がノルウェーで開かれたのが、その2年前。当時、国内に選手は数人しかいない。女子プロレスのテレビ放映はあれど、「女子レスリングなんて誰も知らない時代」だった。「それをやりたいなんて、本当に『変わり者』でした」

 家族は猛反対した。父は「女…

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この記事を書いた人
後藤遼太
東京社会部|メディア・平和担当
専門・関心分野
日本近現代史、平和、戦争、憲法