YG

タフでストリート感覚にあふれ、南カリフォルニア特有のチルなムードを漂わせるYGは、21世紀のラップ界において最も自信に満ちたラッパーの一人だ。YG（本名Keenon Daequan Ray Jackson）は、1990年にコンプトンで生まれた。ロサンゼルス出身のプロデューサー／DJのMustard（TYGAやリアーナのクロスオーバーヒットを手掛ける）と並び、ヴィンテージの味わいのあるシンプルなGファンクにサンフランシスコ・ベイエリア発祥のヒップホップカルチャーであるハイフィーを少し取り入れたサウンドで、メインストリームにこびることなく、メインストリームを席巻することを可能にし、その地元のサウンドを全米に広めることとなった。彼の最初の2作である2014年の『My Krazy Life』と2016年の『Still Brazy』は、ビルボードのポップチャートとラップチャートの両方でトップ10入りを果たした。ギャングスタラップの指標である2Pacやスヌープ・ドッグらを手本にしたYGのスタイルは、明らかに流動的だ。「1AM」「Meet The Flockers」のような曲に見られるストリートの描写と、「Who Do You Love?」やTy Dolla $ignと共同制作したヒット曲「Toot It And Boot It」のようなパーティーソングの間をバランスよく行き来する。彼は人生の闇となる側面を、真摯（しんし）かつ直接的に、そして粋なユーモアによって全く感傷的になることなく語ってみせる。2015年、YGはスタジオで銃弾を受けたが、翌日にはレコーディングに戻ったという。彼はそのことを、「Who Shot Me?」で曲にした。そしてその数週間後、彼はビルボードにこう語った。「あの出来事について書くのは大変だったかって？ いや、全然」。そしてこう加えた。「俺はマジでヤバい体験を重ねてきたし、今もそれは変わらない。そして俺はそういう厄介な状況を乗り越えて、ネガティブなことをポジティブに変えたんだ」