

「BAD HOP解散後、さまざまな新しい環境に一人身を置いて、約1年かけて完成させました」。メロディアスなフロウでひときわ存在感を放つG-k.i.dは、初のソロアルバム『Hood Melody』についてApple Musicに語る。グループが解散に向かう中で、資格試験への挑戦や俳優としての活動など、自身の新たな可能性を模索しながら制作を続けた。「自分が川崎で生まれ育ち、見てきたもの、聴いてきた声や音、肌で感じてきたものなどを楽曲で表現して伝えたいと思っていた。なので、曲を書き出すより先にアルバムのタイトルが自然と決まっていました」 温かく開放的なサウンドと共に新しい一歩を踏み出す「NEW DAY」や、Kohjiyaを迎えてアフロビーツに挑んだ「Oneway Drive」、客演のEric.B.Jr.、Deech、Kvi Baba、ELIONE、DADAをフィーチャーした多彩な楽曲が並び、ヒップホップを軸に豊かな音楽性が広がっている。「16曲それぞれに16個の、川崎という街の中でも特異な状況に生まれ育った自分の感情や経験を詰め込んだ。“G-k.i.dにしか作れないアルバム”を、今の日本のヒップホップシーンに提示できたのではないかと思います」。その核となるのは、フッドのタフな環境で培われた揺るぎないメロウネス。そして、これまでに経験してきたさまざまな出来事、そこで生まれた感情や思いを普遍的に伝えるリリックだ。地に足を付け、ストリートの視点から紡がれた全16曲は、繰り返し聴くごとに日常に寄り添い、味わいを増す。ここからは本人に、全曲を紹介してもらおう。 Prelude 1曲⽬ということで、このアルバムの⾃⼰紹介のようなイメージで作りました。⾃分が⾒てきた川崎という街の特性や、そこで育ってきた状況を分かりやすく表現した楽曲になっています。 TOP (Feat. Eric.B.Jr.) ⾃分は⼦供のころから何をやってもうまくいくことが多い(笑)。だから、その⾃分が仲間を引き連れて、底辺の環境からトップを⽬指すんだという思いを歌詞に⼊れ込みました。初めはソロ曲として作っていたのですが、⾃分のバースが完成して聴いた時「これにEric.B.Jr.が⼊ったら絶対かっこいい」と思い、彼の一ファンとして声を掛けると、数⽇で書き上げてくれました。 Friday Night この楽曲はアルバムの中でも⼀番緩く適当に作りました(笑)。あえて堅くならずノリを優先してフロウやリリックを作り上げ、ノリの良いビートにゆったりと踊れる曲に仕上がったと思っています。 Black List (Feat. Deech) 俺らに憧れてラップやってますと⾔ってくれる若い⼦が増えて、ヒップホップが盛り上がって本当にうれしいと思っている反⾯、内⼼「俺らみたいになったらやばいぞ…」と思うことも多かったので「地元のガキが憧れちゃってる、悪いことは⾔わないからやめておけ」とリリックに⼊れました(笑)。 Life Gose On みんなそれぞれの⼈⽣には違いがあるし、⼈と⽐べてしまったり⽐べられたり、⼈の⽬を気にしすぎてしまうことってあると思うけど「もっと⾃分の⽣き⽅にこだわって偽りなくいきたい」という、⾃分に対して書いた楽曲です。 Daily 地元川崎の街での仲間との思い出や、初めてブースに⽴った時のことを思い出しながら作りました。池上の公園でスピーカーを囲み、ヘネシーを回し飲みして聴いてたANARCHYさんの「Fate」は忘れられないです(笑)。 HANEDA (Feat. Kvi Baba & ELIONE) 物事の捉え⽅次第で、⽬標との距離は⼤きく変わると思っています。「⾟い」「過酷」「試練」と捉えるか、それとも前向きに受け⽌めるか。困難さえもポジティブに変えていきたい。そんな⾃分の思いを込めました。Kvi Babaのキャッチーなフック、ELIONEの⼒強いバースが重なり、より前向きなエネルギーを感じられる⼀曲に仕上がっています。 Oneway Drive (Feat. Kohjiya) 初めてアフロビーツに挑戦した⼀曲。夜のドライブをイメージし、当初はシンプルに楽しい曲にするつもりでしたが、⼈⽣には悩みや不安、そしてふとした寂しさもつきまとうもの。そうした感情を織り交ぜることで、哀愁漂うドライブチューンに仕上げました。Kohjiyaのバースは楽曲の持つ哀愁や夜の空気感に溶け込み、まるで夜⾵のように包み込んでくれる。彼ならではの表現が、この曲に深みと余韻を与えています。 NEW DAY BAD HOP解散から数か⽉、意図的に楽曲制作から離れていた時期があって、でも気がついたらまたビートを聴いて楽曲を作っていた。「今はまだ終われない、やり残したもんがあって」と歌っているように、そこからアルバムの制作に本腰が⼊っていきました。その時の感情の機微をそのまま曲にしようと思い、この楽曲が完成しました。 I Close My Heart この楽曲はアルバムの中でも空気感やシーンをガラッと展開させてくれる楽曲になっています。「寂しくないよ、ひとりじゃないよ」と歌って⾃分の寂しさを⾃分で慰め、暗闇の中で消えかけてるロウソクの⽕に「⼤丈夫!頑張れ!」とエールを送っているような楽曲に仕上がりました。 Midnight 時間は限られていて、⼀瞬で過ぎ去ってしまう。だからこそ、⼀緒にいられる時間を⼤切にしたい、そんな思いを込めた楽曲です。「今⽇は君の誕⽣⽇じゃないけど、理由なんてなんでもいい 君祝いたい⽇」のフレーズのように、誰もが⼤切な⼈との⽇々を特別なものとして過ごせるよう願っています。 Lost ⽇頃⽣活してて昔を思い出し、あの頃楽しかったなと思うことはあるけど、当時の⽣活や環境よりも良くなっている今があるので、あの頃に戻りたいとは思わないのですが「なんか⾜りない」と思うことがある。実際何が⾜りないか、何をしなきゃいけないのか、分かってはいるけどそれを認めたらすべてが終わってしまうような、そんな気持ちを楽曲にしました。 さようならはいつも (Feat. DADA) 学校の卒業や仕事の退職、彼⽒彼⼥との別れや友達の突然の死。新しい出会いがあれば別れもある。別れはいつも突然やってくるのに、⽇頃ちゃんと⾔葉にして相⼿に感謝を伝えられていなかったり、ありがとうと⾔いたくても⾔えないこともある。そんなことを感じて、⽇頃から感謝を伝えていきたいという思いを楽曲にしました。 Voice Letter どこで何をしているのか分からない友達がたくさんいるけど、どれだけ会えない、連絡を取れない時間があっても友達なのは変わらない。「俺は今も頑張ってる」と、この楽曲を⼿紙の代わりにして、遠くで頑張ってる友達に少しでもエールが届けばと思い作りました。 Skit -街⻆のPlaylist- 楽曲では表現できない、⾃分が実際に育ってきた中で聴いてきた⾳や声を、川崎の奏でるメロディというイメージで書き起こしたスキットです。「街⻆のPlaylist」と題し、アルバムタイトル曲の幕開けのような役割を担っています。 Hood Melody 川崎のさまざまな⼈の声や家庭環境の⾳を聴き育ってきた体験を、リアルに⾔葉に変えて楽曲にしました。⼦供の頃から⾒てきた「普通」は「普通じゃない」と知り、これまでも多くの楽曲の中で伝えてきましたが、それらの集⼤成としてソロアルバムのタイトル曲に仕上げました。