東大生は、なぜ受かったのか? 共通するのは「具体的な勉強内容をスケジュール管理」【座談会・前編】

2025/04/09

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合格者の体験談は、受験生にとって最も参考になる情報の一つです。大学受験の最難関である東京大学に合格した学生には、どのような共通点があるのでしょうか。「東京大学新聞」の編集に携わる東大生3人に、東大を目指した理由や受験勉強のことなどについて聞きました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」・平岡妙子編集長)

 

座談会参加者

  • ● 内田翔也さん(2年)……学校推薦型選抜で文科三類に合格、東京都出身
  • ● 山本桃歌さん(1年)……一般選抜で理科一類に合格、静岡県出身
  • ● 丹羽美貴さん(1年)……学校推薦型選抜で文科三類に合格、東京都出身

 

先生から提案され、目指せると気づいた

――東大を目指した理由を教えてください。

 内田 中3の時にカフカの著書を読んだことがきっかけで哲学に興味を持ち、大学でも学びたいと思うようになりました。当時読んでいた哲学書の中には、東大の教授が書いたものが何冊もあったし、実際に東大には、哲学を研究する名だたる教授が多くいます。それに、通っていた高校は東大を目指せる環境が整っていたので、自然と視座が定まった感じです。

山本 理由はいくつかありますが、その一つは東大には大学入学時は大まかな科類だけを選び、3年に上がるタイミングで専攻を決める「進学選択」という制度があることです。私は高2の文理選択で理系クラスを選びましたが、日本史が大好きで文系にすべきか最後まで迷いました。だから、入学後に文転もできるというこの制度に惹かれました。

丹羽 私は将来ジャーナリストになりたいので、ジャーナリズムを専門的に学べる大学院「情報学環・学際情報学府」があることに魅力を感じました。ただ、通っていた高校は東大進学者が3年前に出たきりというくらい、ほとんどいなかったこともあり、高校1年の進路相談まで東大なんて考えてもいませんでした。先生から「東京大学という選択肢もあるよ」と提案されて初めて、「私にも東大を目指す資格があるんだ」と気づいたくらいです。

勉強のコツは「スケジュール」

――内田さんと丹羽さんは学校推薦型選抜での合格ですが、他大学の一般選抜は受験しましたか。山本さんは、他大も併願したのでしょうか。

内田 国立大学の前期で東大を受験する予定でした。また、東大の学校推薦型選抜には共通テストも課されたので、共通テスト利用で早稲田大の法学部、一般選抜で同じく早稲田大の文学部に出願。文学部は入試日が東大の学校推薦型選抜の合格発表後だったので受験していませんが、共通テスト利用の法学部には合格しました。

丹羽 国立大学の前期で東大、後期はお茶の水女子大の文教育学部を受験する予定でした。私立大は、共通テスト利用で法政大、立教大、上智大を受けて合格。一般選抜で早稲田大と慶應義塾大に出願しましたが、早稲田大と慶應義塾大の入試は東大の合格発表後だったので、受験しませんでした。

山本 早稲田大の創造理工学部、慶應義塾大の理工学部の一般選抜のほか、共通テスト利用で東京理科大、明治大、立教大を受験して、すべて合格しました。

――受験勉強はどのように進めましたか。

内田 学習の「構造化」を意識しました。自分の実力や勉強の進み具合を俯瞰(ふかん)して、学習が足りない分野、苦手な分野を洗い出し、そこを重点的に勉強していく感じですね。また勉強の予定も、「この日は何時から何時までどの科目のどの教材をやる」「下校時の電車の中では何を勉強する」といったことまで決めて、スケジュール帳に書き込みました。本番までに苦手科目を克服できたのは、早いうちからスケジュールを立てて、集中的に取り組んだからだと思います。

内田さんの手帳。電車の中でやる予定まで細かく決めて書き込んでいる

――内田さんのスケジュール帳(上図)には、「日本史1問は必ずすること」といった記載も見られます。苦手科目からも逃げずに、スケジュールに組み込んだのですね。

内田 日曜日の、それも反省しやすい夜の時間帯に、1週間分のスケジュールを決めていました。計画と実際との整合性が取れているかを確認するために活用したのが、「Studyplus」というアプリです。自分がどの科目を何時間やったのかを記録しておくと、学習の現状がグラフや表などで可視化されるので、それを見て、「英語と社会は重要事項を網羅しきれていないから、もう少し勉強したほうがよさそうだ」とか、「数学はまだ余裕がありそうだ」といったことを把握し、翌週に生かしました。やはり構造化ですね。

高校の先生と話すことも大事にしました。国語科の先生が大学で哲学を勉強していたので、職員室に行っては勉強の進め方を相談したり、哲学のレポートを見てもらったりしました。誰かと話すことは、自分で客観視できない問題を把握することにも役立つし、何よりいいリフレッシュになりました。

中3で物理を「先取り」受講

山本  私も東大の2次試験で出題される英文の要約問題や現代文の記述問題などは、高校の先生に見てもらっていました

それから、効果があったのは先取り学習です。周りに東大の理系学部に合格した人がいなかったので、受験勉強を始めた時は何をすればいいのかがまったくわからず、とりあえず中3から映像授業の予備校に通い始めて、数学と物理の授業を受講しました。

――物理は高校で習う科目ですが、中3で受講したのですか。

山本  予備校で物理を先取り学習しておこうというのは、母のアイデアです。私が通っていた高校では、高1の終わりに文理選択があって、理系クラスでは高2から物理の授業が始まります。理系クラスを選んでから「物理は合わない」とわかっても後戻りできないので、先に試しておこうと考えたわけです。お試し受講で物理が合わなければ、文系クラスを選んで日本史のほうに進むつもりでしたが、実際は物理の勉強がすごく楽しかったので、理系クラスを選びました。

「塾には行かない」と決断

丹羽  私は、高2の時に塾に行かないと決めたことが大きかったですね。塾の体験授業には行ってみましたが、その予習に追われた結果、高校の勉強に手が回らなくなり、かえって勉強に対する不安が増えてしまいました。だったら、現役の時は塾なしでやってみようと思い、わからないところの質問などは高校の先生に頼りつつ、勉強のスケジュールは自分で立てて進めました。

――みなさん、計画をしっかりと立てていますね。

丹羽 実は計画を立てるのが苦手で、初めは1年単位の計画表くらいしか作っていませんでした。でも、それではダメだと思って、月単位のスケジュール表を作り、それを1日単位に落とし込むようにしたのが、高3の6月ころです。そこに自分なりの工夫をいくつか取り入れたところ、どれも効果がありました。

丹羽さんの月間計画表

一つは、集中度の記録です。予定をこなすごとに、集中度を「◎」「○」「△」の3段階に分けて記録したところ、自分なりの傾向がわかり、集中しやすい午前中にはこの科目、眠くなりがちな食後はこの科目というように、それぞれの時間帯に適した学習ができるようになりました。

丹羽さんのデイリーの予定表。集中度が「◎」「〇」「△」で記録されている

教材とノートの一元化は、世界史の暗記学習に役立ちました。当時使っていた『時代と流れで覚える! 世界史B用語』(文英堂)という参考書の余白に授業で習ったこと、過去問で出題されたこと、自分なりのまとめなど、あらゆる情報を付箋などでどんどん書き込み、その1冊を夏休み中に10周繰り返し学習しました。

丹羽さんの参考書。あらゆる情報を1冊にまとめた

――細い付箋もたくさん貼ってありますね。

 丹羽 付箋は、初見でわからなかったところに貼りました。つまり、最初はほとんどわかっていなかったということです(笑)。この学習方法は有効でしたが、デメリットもありました。何度も同じページを繰り返し読むと、「あのページの右上に書いてあった」というようにビジュアルで暗記してしまい、流れが頭に入らなかったのです。

そこで考えついたのが、ホワイトボードを使った学習です。例えば、「東西冷戦の流れ」といったテーマについて、まっさらな紙やホワイトボードに書き出してみると、書けないところが出てきます。そこは知識が抜けているか、理解できていないところということなので、重点的に復習するようにしました。

※学年は取材時のものです。

>>【座談会・後編】東大生が語る 合格に必要なのは「誰に何と言われようと、東大に入るという強い気持ち」

(文=木下昌子、写真=編集部撮影)

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【写真】東大生は、なぜ受かったのか?共通するのは「具体的な勉強内容をスケジュール管理」【座談会・前編】

内田さんの手帳。電車の中でやる予定まで細かく決めて書き込んでいる
内田さんの手帳。電車の中でやる予定まで細かく決めて書き込んでいる

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