「新宿駅から出られず半泣き」のトラブルも 遠方からの大学受験、親も同行すべきなのか?

2025/01/17

■特集:大学入試を乗り越える

大学受験では、自宅から遠く離れた大学を志望する受験生もいます。不慣れな土地で、しかも何日も宿泊して受験に挑むとなると、心理的にはそれだけでなかなかの負担です。心を落ち着かせてくれる必須アイテムは何か、親はわが子の受験に同行すべきか……。受験のプロによるアドバイスをまとめました。(写真=Getty Images)

持ち物に込めたいのは「安心」

宿泊を伴う受験の場合、どんな持ち物があるといいのでしょうか。遠方でなくても忘れてはいけない物は、受験票や時計、会場が寒い時に羽織れるもの、いつも飲んでいる薬など。また、普段はコンタクトレンズをしている人も、不測の事態に備えて眼鏡を持参しておくと安心です。

トフルゼミナールの犬塚泰輝さんは、「靴下を持っていけばよかった」という受験生がいたと言います。
「試験当日に冷たい雨が降って、前日に家から履いてきた靴がびしょ濡れになってしまったそうです。靴の中まで水が染み込んで、足が冷たくて試験に集中できなかったと言っていました。雪やみぞれが降ることもある季節ですから、天候によっては、会場に持っていくカバンに替えの靴下を入れておいてもいいと思います」

受験生の必須アイテムである参考書については、代々木ゼミナールの木戸葵さん、アクシブアカデミーの鈴木優志さんは、意外にも「最小限でいい」と口をそろえます。ポイントは「安心」と「お守り」です。

「前泊しても、勉強する時間はあまり取れません。追い込みのためというよりは、日頃使っている参考書を、安心のために持っていくという感覚でいいと思います。そのほか、日常を思い出させて心の支えになるものとして、お守りや友達にもらった手紙、いつも食べているお菓子などもいいですね。また、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンなども、雑音を遮って集中力を高めてくれるので、持っていくことをおすすめしています」(木戸さん)

「たくさんの参考書を持っていっても、重いだけでさほど役には立たないものです。例えば歴代総理大臣の一覧などは、直前の短期記憶でも有効ですから、こういったものをサッと見る程度でいいと思います。ほかには英語の長文もいいですね。これはギリギリに何かを詰め込むというよりは、頭を切り替えて、試験の助走を図ることが目的です。安心をもたらすお守りとしての役割を重視して、現地に持っていく参考書を厳選しましょう」(鈴木さん)

ホテル予約はいち早く

受験時のホテル選びで何よりも重要なのは、いち早く予約をすることです。地方の国公立大学周辺にはそもそも宿の選択肢が少ないことが多いので、「共通テストの結果を見たらすぐに予約をしてください」(犬塚さん)。首都圏の私立大学周辺には多くのホテルがありますが、受験者も多いだけにこちらもすぐに埋まってしまいます。

「志望校が決まったら即座に予約をしましょう。特に東京都内のホテルは年々、宿泊費が高騰していますが、安すぎて音が気になるホテルやカプセルホテルではリラックスして過ごせません。ある程度、きちんとしたビジネスホテルを選びましょう」(木戸さん)

事前にチェックすべき設備は、勉強できる机があるか、部屋に加湿器があるか、禁煙ルームかなど。Wi-Fi環境も確認しておきたいところです。

「試験前日に家族や友達とビデオ通話したり、塾の先生とオンライン面談したりできれば、少しリラックスできるでしょう。また、チェックアウトの日に試験がある場合は、荷物を預かってもらえるかも確認しておきたいですね。近隣のコインロッカーはたいてい、同じことを考える受験生の荷物でいっぱいになっています」(犬塚さん)

ホテルから大学までの経路確認を含め、事前の下見も大切です。
「電車に乗らずに大学に行けるホテルが取れれば一番いいのですが、そうでないなら、混雑する上り方面ではなく下り方面の電車に乗れる場所を選んでください。前日でいいので、なるべく大学の中まで入ってみることも重要。試験会場を『知っている場所』にしておくことは、とても大きな安心材料になります」(鈴木さん)

木戸さんは「大学所在地の雰囲気を知っておくのも受験勉強の一つ」だと付け加えます。学部によっては、面接時に大学のある地域に関する質問をされることもあるからです。

「医学部の面接などでは、その地域のいいところや課題について聞かれることもあるので、前日の経路確認の際、少し大学周辺を歩いてみるといいでしょう。その街は、合格したら春から住むところ。暮らしを想像することで、翌日の入試のモチベーションも上がるはずです」

(図=取材をもとに編集部作成)

親はついていく? いかない?

昔は珍しかった「親同伴の大学受験」ですが、昨今子どもの受験についていく親は増えています。大学側も保護者控室を用意して、受験生が試験を受けている間に、親向けの説明会を行うところもあります。

3人のうち、親同伴を特に推奨するのは鈴木さんです。
「アクシブアカデミーでは親同伴を前提に助言しています。保護者に『何日ぐらいついていけますか』と確認して、有給休暇もどんどん使ってもらうように話しています」

その理由は、情報がない状態での遠征受験は厳しい戦いになると実感しているからです。

過去には、半泣きの受験生から『新宿駅から出られない』と電話がかかってきたことがありました。とくに東京は私鉄や地下鉄が多く、同じ線に乗っても、特急か準急か各停かによって到着ホームが変わってしまうこともあります。こうしたことも含めた下調べを親と塾とで徹底して行うことで、生徒が試験に集中できる環境を整えられます」

犬塚さんのトフルゼミナールは女子の割合が多いので、遠方の受験に同行する親は多いそうです。親がついていくかどうかは、各家庭の判断に任せていると中立の立場を取ります。

「親が同行している家庭はだいたい半数ぐらいでしょうか。保護者が『東京在住の友達に会う』『私も行きたい場所がある』など、ついでの用事を作っている例もよく目にします。ただ、これは子どもが『わざわざついてきてくれた』とプレッシャーを感じないよう、あえてそう話しているのかなとも思います」

一方で、どちらかというと「一人受験推奨派」なのが代ゼミの木戸さんです。
「受験を終えた生徒に聞くと、『ついてきてくれてよかった』という人もいれば、『別に来なくてよかった』という人もいて、考え方は実にさまざまだなと感じます。ただ、親が負担に感じるようなら、個人的には、無理に同行する必要はないと考えています。私自身も一人で遠征受験をしました。初めて行く場所で不安はありましたが、試験会場までの経路を調べ、自分一人で行動する経験ができたことは、自立への大きな一歩になったように思います。宿泊先で親と同じ部屋だとよく眠れなかったり、勉強に集中しにくかったりということもあります。『いつも通り、ここで応援しているよ』と、子どもを信じて送り出してあげてもいいのではないでしょうか」

>>【特集】大学入試を乗り越える

(文=鈴木絢子)

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