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2024年度の大学入試は、日本大学の志願者数が大きく減るなど、特徴的な動きが見られました。一方で、志願者数が大幅に増えた大学もあります。人気を集めたのは、どんな大学でしょうか。代々木ゼミナールが集計した2024年度「私立大学 志願者数増加上位20大学」から見ていきます。(写真=Getty Images)

志願者数が1万6000人も増加

代々木ゼミナールの「私立大学 志願者数増加上位20大学」は、24年度入試における私立大学一般選抜の出願状況をまとめたものです(6月22日更新)。まずは志願者が増えた1位から10位までの大学を見てみます。最も志願者が増えたのは東洋大学です。前年より約1万6000人も増え、志願者数は10万人を超えました。

大学通信情報調査・編集部の井沢秀部長はこのように考察します。

「24年度入試の大きな話題は、日本大学の志願者が前年から2万人以上も減ったことです。アメリカンフットボール部員の違法薬物事件や、不祥事に対する大学側の対応などによるイメージ低下が原因といわれています。志願者が増えた1位の東洋大学は前年より約1万6000人、4位の専修大学は約6000人増加しました。難易度が同じレベルの大学群のため、日本大学を避けた志願者がこれらの大学に集まったと考えられます。また、両大学とも前年は志願者が減っており、その反動で増えた隔年現象の影響も考えられます」

さらに東洋大学の志願者増の背景には、「キャンパス移転など大学改革の影響もある」と井沢部長は見ています。板倉キャンパス(群馬県板倉町)にあった生命科学部と食環境科学部が、24年4月から都心からも通いやすい朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)に移転し、理工学部生体医工学科と統合して、「命と食」をテーマにした2学部6学科のキャンパスに再編しました。
「時代に合わせて改革を進めていく大学の姿勢が、受験生や保護者に魅力的に映ったのではないでしょうか」

4年連続で志願者増の関西学院大学

2位の関西学院大学は、4年連続で志願者が増えています。少子化で多くの大学が志願者を集めることに苦戦しているなか、このような大学は珍しいといえます。

要因の一つとして、井沢部長は「21年度に学部の大幅な改組・再編を行い、理系学部を充実させたことが大きいのではないか」と分析します。神戸三田(さんだ)キャンパス(兵庫県三田市)にあった理工学部と総合政策学部のうち、理工学部を理学部、工学部、生命環境学部、建築学部に改組・再編しました。

「関西学院大学は関西を代表する難関私立大の一つで、もともと人気が高い。ここに近年の理系ブームが加わり、志願者が集まるようになったと考えられます」

同じく関西の難関大学で、積極的に改革を進めてきたのが、7位の立命館大学です。
「07年に映像学部、18年には食マネジメント学部と、他大学に先駆けて新しい学部を設置しています」

さらに24年4月に、衣笠キャンパス(京都市北区)の映像学部、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)の情報理工学部が大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)に移転しました。

「これが志願者数増加の大きな要因になったことは、間違いないでしょう。大阪いばらきキャンパスはJR京都線・茨木駅のすぐそばにあり、京都方面からも通いやすい。既存の経営学部、政策科学部など4学部と合わせて6学部、1万人規模のキャンパスとなり、スケールがとにかく大きいのです」

入学検定料の割引制度を拡充した大学も

上位10位に入った中堅私立大学には、「高得点の科目を重視する入試方式など、受験生が受けやすい入試方式を増やしたり、入学検定料が安くなる割引制度を導入したりという取り組みを実施した大学が多くみられる」と井沢部長は言います。3位の中部大学、5位の大東文化大学、6位の大阪産業大学、8位の広島修道大学などです。高得点科目重視方式とは、3科目で受験した中で、高得点が取れた2科目だけで判定する制度で、大阪産業大学や広島修道大学で取り入れられています。

中部大学大東文化大学は、入学検定料の割引制度を拡充し、受験生の経済的負担を減らしたことが、志願者数の大幅増につながった要因と考えられます」

続いて、11位から20位を見てみましょう。12位には法政大学が入り、志願者数は10万人を超えています。

「法政大学では14学部が同じ日に試験を行う『T日程入試(統一日程)』があります。これは2科目で受けることができるので、受験生の負担が少ない。MARCHクラス以上で2科目型の入試を実施しているのは、法政大学だけでしょう。この影響が志願者増につながっていると思います」

14位の上智大学は、23年度入試から共通テスト利用方式にそれまでの4教科型に3教科型を追加したことが大きいと見られています。

「ただし、入学検定料の割引制度を設けたり、入試方式を新しくしたりしても志願者が増えない大学も実は多い。志願者が増えている大学や、安定して志願者が集まる大学は、教育内容やキャンパスなど、ほかにも受験生が魅力を感じる要素があるのだと思います」

志願者数を減らした早稲田大学の見解

一方、早稲田大学の24年度の志願者数は8万9420人で、9万人の大台を割りました。同大学では、看板学部である政治経済学部が21年度から一般選抜に大学入学共通テストの「数学Ⅰ・数学A」を必須とし、英語と日本語による長文の独自問題を課しました。この影響から、同学部の一般選抜の志願者数は、20年度の7881人から21年度は5669人と前年比72%に激減し、22年度は4872人まで減少しました。23年度に5209人に増えたものの、24年度は5042人と再び減少しています。

早稲田大学は以前の入試方式に戻せば、志願者は確実に戻るでしょう。しかし、そうはしないはずです。政経学部が数学を入試に取り入れたのは、入学後の勉強に必要だからで、実際、入試方式を変えたことで期待していた学生が多く入ってきており、志願者数にはこだわっていないと考えられます

井沢部長は「受験校を選ぶときには、科目数の少ない入試方式や、倍率の低い大学・学部に目が行ってしまうかもしれませんが、最優先にすべきは、学びたい学部や大学です」と話します。

「少子化の影響で大学は入りやすくなっています。過去のデータをさかのぼるとわかりますが、志願者数が多いといっても、一昔前と比べれば随分少ないです

志願者数は受験者や保護者の関心を表しているともいえますが、その増減にとらわれすぎず、自分が何を学びたいのかを重視することが大切です。

 

>>【連載】ランキングまるわかり
(文=狩生聖子)

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