【お悩み】人前が苦手、不登校ぎみの娘…ビリギャルおすすめの「乗り越え方」は?

2024/06/19

■思春期子育てお悩み相談

学校生活の中で、発表する機会は多くありますが、人前で話すことに苦手意識がある中高生は少なくありません。そうした子どもからの悩みに、親はどんな対応をすべきなのでしょうか。思春期の子と親のリアルな悩みを聞いてくれるのは、「ビリギャル」として知られる小林さやかさん。先日、アメリカのコロンビア大学教育大学院を「オールA」で修了した彼女が、親世代に伝えるアドバイスとは?(写真=本人提供)

Q.娘が中学に入ってから不登校になり、今は中学3年生です。不登校の大きな原因になったのは、授業の内容です。娘は小さい頃からあがり症で、人前で何かをするのは大嫌い。参観日でも手を挙げたことはなく、学芸会でも目立たない役を選び、運動会も目立ちたくなくて全力で走ったことがありませんでした。それが中学に入ると、プレゼンなどの機会が増え、英語や道徳、音楽などでも一人で発表することが多くなり、だんだんと学校に行けなくなりました。先生は「苦手な授業は受けなくていい」とか、「遅刻や早退でもいい」と言ってくれますが、娘は「遅刻や早退は目立つし、保健室登校も嫌」と言います。最低限の勉強は家庭教師をつけてしており、本人は「将来の仕事は人前でプレゼンすることばかりじゃないのに」と言っているのですが、今後どうなるのかと不安です。(母親・51歳・東京都在住)

訓練なしでは、心が折れても当然

【回答】

娘さんのリアクションはものすごく真っ当だと思います。これまでやったことがないこと、しかも恥をかくのが想像しやすいことをいきなりさせられるのは、大人でも怖いはず。もし共学なら異性の目もあるし、思春期にはなおさらだと思います。

日本人って、本当に人前で話すのが苦手ですよね。近年はアクティブラーニングなどの取り組みも増え、プレゼンの機会が増えていること自体はいい試みだと思います。でも、これはスモールステップで丁寧にやらないと、心が折れて当然だと思うんです。

私も大学で発表するときは、英語が苦手だということもあって、いつも心臓がバクバクです(笑)。アメリカ人は全然緊張していないように見えるので、友達にその理由を聞いたら、彼女たちは小学校に上がる前から人前で話す訓練をしているそうです。幼稚園でも「今日はあなたがスピーカーね」と、いきなり発表役を振られる。うまく話ができない子もいますが、そういうときは大人が「朝ごはんは何を食べたの?」「今日のファッションのポイントは?」などとサポートして、少しずつスモールステップで、しっかり自己主張できるマインドを育てていくそうです。つまり、問題は娘さんにあるのではなく、トレーニングなしでいきなり実践が求められる環境にあると私は思います。

講演をするようになってから、私がやっていた練習法をお話ししますね。まずはスクリプト(台本)を書いて丸暗記する。次に実際に話しているところをスマホで動画に撮ってみる。自分が話している動画を見るのは、すごく嫌なんですよね(笑)。私も最初は嫌でしたが、撮ってみることで「自信なさそうだな」とか「ちょっとしゃべるのが速すぎるな」とか、改善点が見えてくるんです。このトレーニングは私自身が効果を感じた方法ですが、これも「人前で話すこと」に娘さん自身が価値を見いだせていないと意味がありません。

コロンビア大学教育大学院のオリエンテーション。世界中から集まった同期たちと(写真=本人提供)

自分との約束を守る

人前で恥をかきたくないという思いの裏にあるのは、自信のなさです。日本人はとにかく自信がない。私もよく「どうしたら自信がつきますか」と聞かれます。「自信」って自分を信じる、と書きますよね。じゃあ、どんな人なら信じることができるか。それは、約束を守る人だと思うんです。ということは、自分との約束を守ることができたら、それが自信につながっていくはず。明日は朝7時に起きるとか、そんな小さなことでいいんです。成功体験によって自分への信頼貯金が増えること、それが自信を持つということです。

「人前でプレゼンする仕事ばかりじゃない」は確かに事実ですが、個人的には、考えを言語化して人に伝えることはとても大事な体験だと思います。プレゼンというと硬いけど、結局はコミュニケーション力につながるもの。人と関わらない仕事はなかなかないので、鍛えれば選択肢が増えるスキルだと思うんです。

卒業式の日、ブルーのガウンを着て(写真=本人提供)

娘さんが興味のあることから、話すことの価値を見いだしてもらえたらいいですね。私は最近、テレビで長く活躍してきた人たちのYouTubeをよく見ているんですが、やっぱりツッコミもしゃべりもうまいなあと、講演者の立場から憧れます。こんなふうに、例えばエンタメの中にも話すことの価値が隠れています。親御さんがちょっと強引にでも関連付けて、娘さんが話すことに興味を持てるような言葉がけを心がけてみてはどうでしょうか。

ただ、ここで変におだてたり、強制したりして、無理に学校に行かせることはしなくていいと思います。大人は「この会社、合わないな」と思ったら転職できるけど、子どもはそうはいきません。自分に合った環境を求めて、もがくこともあると思いますが、大事なのは親がそこでドギマギしないこと。ズドーンと構えていてあげましょう。

そういう意味では、いったん「プレゼンなんて別にいいよね」という姿勢を見せてもいいかもしれません。それよりもたくさん対話をして、どんな大人になりたいかを一緒に考えてあげましょう。子どもがワクワクできる将来のビジョンを指し示す存在でいてください。

〈プロフィル〉
小林さやか(こばやし・さやか)/1988年名、古屋市生まれ。中学・高校でビリを経験。素行不良で何度も停学になり、高校2年生のときの学力は小学4年生のレベルで偏差値は30弱だったが、塾講師の坪田信貴氏との出会いを機に大学受験を目指す。その結果、1年半で偏差値を40上げて慶應義塾大学に現役合格を果たした。その経緯を描いた坪田氏の著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』は120万部を超えるミリオンセラーとなり、映画化もされた。大学卒業後はウェディングプランナーの仕事に従事した後、「ビリギャル」本人として講演や執筆活動を行う。2021年、聖心女子大学大学院文学研究科人間科学専攻教育研究領域博士前期課程修了。24年5月に米国コロンビア大学教育大学院で認知科学の修士号を取得。近著に『ビリギャルが、またビリになった日 ─勉強が大嫌いだった私が、34歳で米国名門大学院に行くまで─』(講談社)がある。

>>【連載】思春期子育てお悩み相談

(文=鈴木絢子)

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