学食メニュー改善から生活の悩みまで 留学生が日本人学生と立ち上げた「サポート」コミュニティー

2024/04/13

■特集:イマドキの留学・国際交流

コロナ禍でしばらく入国が制限され、激減した外国人留学生。入国制限が解除されたことで、全体数はコロナ前に比べてまだ減少傾向にありますが、大学の交換留学プログラムなどで外国人留学生が戻る兆しが見えています(日本学生支援機構省2022年度「外国人留学生在籍状況調査」)。活発になってきた大学内の国際コミュニティーの活動では、どんなことをしているのでしょうか。(写真=東京理科大学提供)

留学生のサポート「キャンパスメイト」

東京理科大学では、2022年度に外国人留学生と日本人学生との交流を図る「東京理科大学キャンパスメイト」(以下、キャンパスメイト)という学生団体が発足しました。

2代目代表を務める薬学部薬学科6年のキム・ジュンヒョンさんは、韓国からの留学生です。キムさんは同団体の発足前、コロナ禍で日本に入国できず、日本の大学の様子がわからなくて困っていた韓国の留学生たちに向けて、キャンパスの様子や日本での学生生活の情報を、個人で発信していました。

「そんなときに、学内のインターナショナルラウンジという異文化交流施設で、日本人学生と出会いました。彼女と話すうちに、彼女にもアメリカへの留学経験があり、留学先で苦労したことを知りました。そこで、学生生活のサポートをはじめ、外国人留学生と日本人学生との交流を進めていく活動をしていこうと意気投合し、同じような意見を持つ学生を集めて、6人で『キャンパスメイト』を立ち上げました」

留学生が多い大学では、留学生同士のコミュニティーが自然とできあがります。800人以上の留学生が在籍する東京理科大学も例外ではなく、各キャンパスに留学生会があります。では、キャンパスメイトと留学生会とはどのような違いがあるのでしょうか。

「留学生会は一般的に、留学生同士で交流したり、サポートし合ったりするコミュニティーです。一方、留学生も日本人学生も同じ東京理科大学の学生としてつながっているのがキャンパスメイトです。留学生会のように留学生のサポートをするだけでなく、中国、韓国、マレーシアなど、日本人学生を含むあらゆる国の学生が所属し、国際交流を図ることも目的としています」(キムさん)

バスケットやクリスマス会

キャンパスメイトの活動は、大きく分けて二つあります。一つは、日本に来たばかりの外国人留学生が、日本での暮らしや学生生活に慣れるまでサポートすることです。新しい留学生3、4人と、世話役の日本人学生や先輩留学生2、3人で少人数のグループをつくり、履修手続きのサポートなど学生生活のことはもちろん、病気やけがなど日々の暮らしで起きるトラブルについても、気軽に相談できるようにしています。日頃からごはんを一緒に食べに行ったり、遊びに出かけたりして交流することもあります。

もう一つは、さまざまな国際交流会の企画・運営です。これまでに、K-POPや観光などを切り口に韓国の文化を学生に紹介するイベントや、留学生に向けた日本語会話のワークショップ、クリスマスパーティーなどを開催してきました。人気があるのはスポーツ系のイベントです。ドッジボール大会やバスケットボール大会には、毎回50人ほどの参加者が集まり、日本人学生の参加も多く、そこで友達ができたという人もたくさんいます。

留学生会との共催で行ったバスケットボール大会

学内の他団体とコラボしてイベントを行うこともあります。最近では、大学の表千家茶道部と一緒に茶道体験会を開いたり、マジックのサークルをハロウィーンパーティーに招いたりしました。

大学の表千家茶道部の協力のもと、野田キャンパスで開催された茶道体験会の様子

交流会は、英語を話す人が多い場合には英語と日本語で行われることもありますが、基本的には日本語で行われます。

「さまざまな国のメンバーが所属していることで、言葉や文化の違いから勘違いや誤解が生じることはもちろんあります。例えば、日本ではオブラートに包んで伝えることがよしとされる一方、中国でははっきり言うのが礼儀だったり、似た言葉でも韓国語と日本語で意味が違ったりします。そういったときは幹部メンバーで相談して、双方に説明して解決につなげています。そうやって理解しあえるのも、多様なメンバーが集まるキャンパスメイトの強みだと思います」(キムさん)

学食のメニューを改善

6人で立ち上げたキャンパスメイトも、SNSや口コミ、大学のホームページでの紹介などによって活動が広がり、いまでは300人近い学生たちが参加しています。中心となる幹部メンバーは20人ほどですが、キャンパスメイトには理科大生ならだれでも参加できます。

キャンパスメイトの幹部メンバー

大学の学生支援課との連携も密に取り、留学生と日本人学生だけでなく、大学との懸け橋にもなっています。

例えば、学食のメニューは大半が日本語表記だったため、日本語がわからないと注文が難しく、留学生が利用しづらい課題がありました。そうした留学生の声をキャンパスメイトが拾って改善案を大学に提案し、その結果、英語表記を加えるだけでなく、メニューの写真を指さしで注文できるようにするなど、利用しやすくなりました。

キャンパスメイトは大学と留学生との距離を縮めてくれる存在」と、学生支援課の團藤広己さんは言います。

「留学生たちも同じ学生のほうが相談しやすいでしょうし、キャンパスメイトのメンバーが間に入ってくれることによって、学生目線で留学生の声をしっかり吸い上げて伝えてくれます。大学としても彼らの意見を反映しながら施策に生かしていくことができるので、すごく良いサイクルができています」

国際化社会に順応するために

今後の活動について、キムさんは次のように話します。

留学生、日本人学生と二分するのではなく、理科大生みんなのためのサポート体制を整えていくスタンスで活動することが大事だと思っています。留学生に対して実施しているサポートの中には、日本人学生も必要としていることもあるかもしれないですから。今後、日本でも国際化の流れは避けられません。国際化、多様化する社会に順応するための準備の場や機会を設けたいと考えています」

東京理科大学に限らず、留学生が多い大学には、さまざまな形の国際コミュニティーが存在します。例えば、上智大学ではイベントやフィールドトリップ(教育目的での訪問)を通して学生同士の交流を図るSophia Student Integration Commons(SSIC)」や、英語だけでなくフランス語や中国語など多様な言語や文化について話し合える「Language Exchange」などがあります。早稲田大学は、2006年に「Intercultural Communication Center (ICC、異文化交流センター)」を設立。学生が主体となって年間200ほどの異文化交流イベントを開催し、イベントに参加するだけでなく、サポーターとしてイベントの企画・運営に携わったり、学生スタッフリーダーとしてICC自体の運営に加わったりすることもできます。

 これからますます加速していく国際化社会。大学の国際コミュニティーは、その縮図ともいえます。大学で多様な文化背景を持つ人たちと交流した経験は、卒業後も大きなアドバンテージになるはずです。

※学年は取材時のものです。

(文=岩本恵美、写真=東京理科大学提供)

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