海外留学の「お金」、意外とおトクなEU圏 授業料が年30万円の国も

2024/03/21

■イマドキの留学・国際交流

わが子を海外留学に行かせたいと思うものの、保護者として気になるのが費用です。どのくらいの学費や生活費がかかり、少しでも抑えるにはどんな手があるのでしょうか。行き先の国によって、金額は大きく異なるため、国ごとの違いを比較します。海外留学には切っても切り離せない、お金事情に迫ります。(写真=Getty Images)

授業料が高額なアメリカ留学

一口に海外留学といっても、行き先や期間、目的によって、かかってくる費用も違ってきます。留学先として根強い人気のあるアメリカは、費用面ではトップクラス。授業料は、私立大学で年間400万〜1000万円程度、州立大学でも年間300万~800万円程度がかかります。加えて円安の今、生活費は年間約150万〜300万円程度が必要になります。

アメリカの名門大学などへの留学指導を行うアゴス・ジャパン代表の横山匡(ただし)さんは、「30年前はアメリカ私立大の1年間の授業料は、日本人の平均年収の3分の1程度でした。でも今は、平均年収の2倍程度になっています」と言います。

この数字だけ聞くと、「わが家はアメリカ留学には手が届きそうにない」と断念しそうになりますが、費用を抑えるにはいくつかの手があります。
まず、日本の大学が協定を結んでいる海外大学で学ぶ「交換留学制度」を利用することです。日本の大学に授業料を払えば、現地の授業料は免除されるため、生活費や渡航費などの負担のみで留学できます。大学のホームページや留学センターなどで調べてみるのがおすすめです。
さらに海外留学する学生に対しては、送り出す大学や国、自治体などがさまざまな奨学金を用意しています。これらを利用すれば、留学費用を抑えることができます。

アメリカの大学の授業料が高いのは事実ですが、4年間留学して学位を取得しようとする場合には、相当額の奨学金が用意されています。例えば、名門として知られるプリンストン大学は、世帯年収が10万ドル(24年2月初旬の為替レートで約1480万円)以下の家庭の学生は、授業料、寮費、食費、雑費を全額免除しています。

「ほかにもハーバード大学、イェール大学といった資金が潤沢な上位校の多くが、保護者の収入に応じて無理なく払える授業料を設定しています。情報収集して志望する大学の傾向を理解し、民間の奨学金も組み合わせるなど戦略を練れば、金銭面は何とかなることが多いです」(横山さん)

ヨーロッパの授業料は年30万円

地域別に授業料を見ていくと、アメリカほどにはいかないものの、カナダやイギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏も、年間の授業料が200万600万円前後と割高です。

「穴場はEU圏の大学」と言うのは、文部科学省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」広報担当の西川朋子さんです。

フランスやドイツ、イタリア、ベルギー、オランダのほか、フィンランドやデンマークといった北欧諸国は、授業料が安いところで年間30万円、医学部を除けば高いところでも200万円程度で学べます。EU諸国は物価こそ高いものの、政府からかなりの税金が教育資金として投資されているため、授業料は割と手頃な金額に収まります」

留学費用の面からも、アジア圏の大学の人気も高まっています

「シンガポールなど一部の国や医学部などの例外を除けば、授業料は日本の大学と大差なく、渡航費も安く済み、学部によっては英語だけで授業を履修することが可能です。そのため非英語圏の国に留学して、英語と現地語の両方を学びトリリンガルを目指すという学生も増えています」(西川さん)

(図=アゴス・ジャパン協力のもと編集部作成/費用は目安)

本気の家族会議を

今は民間団体による奨学金も充実しています。例えば、柳井正財団は返済義務のない給付型奨学金を支給しています。
「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」も、民間企業などから募った寄付金で、留学する高校生や大学生などに返済不要の奨学金を給付しています。

「奨学金の対象となるのは大学生などについては年間約250人。各自の関心や課題意識に応じた28日〜1年の留学計画をもとに、語学力や学力よりも『情熱』『好奇心』『独自性』を重視して選考しています。人と違うユニークな視点を持ち、我こそはと思う方は、ぜひ応募してみてください」(西川さん)

トビタテ!留学JAPANの奨学金は、家計の状況や留学先によって異なりますが、例えば北米方面なら、往復渡航費や査証取得などの準備費用として25万円、授業料として30万円、そのほか月額16万円が支給されます。

アゴス・ジャパンの横山さんは、「グローバル人材を増やそうと、政府が留学を後押しする流れが強まっています」と言います。

「岸田首相が議長を務める『未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ<J-MIRAI>』は23年春、日本からの留学生数をコロナ禍前の年22.2万人から33年までに年50万人に引き上げることを提言しました。政府は海外留学の総予算も引き上げ、日本人留学生への奨学金など経済的支援を充実させようとしています。以前に比べると、留学を希望する学生にとっては明らかに追い風だと思います」

留学の費用面に頭を悩ませる親御さんに、横山さんはこうアドバイスします。

「お子さんが留学をしたいと言い出したら、『本気の家族会議』をする良い機会です。うちはいくらまでしか出せないよ、という経済事情をきちんと伝え、まかなえない分はどうするか、親子で話し合ってみましょう。お子さんも家庭の経済状況を知り、あきらめるのか、奨学金を狙うのか、自分の進路をより真剣に考え始めるのではないでしょうか」

(文=中村茉莉花)

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