データサイエンス「現代の教養」に 学部を超えて「必修」の時代に

2023/08/27

■大学トレンド

さまざまな分野や業界で、AI(人工知能)やデータサイエンスを活用して課題解決を図る力が求められるようになりました。そうした社会のニーズに応えるように、文系・理系の学部に関係なく、全学部生を対象としてデータサイエンス教育に力を入れる大学が増えています。データサイエンスの知識を得ることは、現代の教養になってきています。(写真=Getty Images)

在学中も卒業後も必要なスキル

法政大学では、2021年9月にデータサイエンスセンターを設立し、全学部生を対象に「法政大学数理・データサイエンス・AIプログラム(略称:MDAP)」をスタートしました。

法政大学市ケ谷キャンパス(写真=法政大学提供)

データサイエンスセンター委員を務める平山喜雄常務理事は、MDAP開講の狙いを次のように語ります。

「現代社会において、データサイエンスやAIを活用して新たな価値を生み出せる人材や、持続可能な社会の構築に貢献できる人材が求められていることから、大学としても社会の要請に応えていくような仕組みを作っていかなければなりません。また、本学では長期ビジョン『HOSEI2030』の中で、課題解決型人材の育成を大きな柱の一つに掲げています。専門分野の研究だけでなく、さまざまな社会課題を解決していくためには、自ら課題を発見し、分析したうえで、エビデンスに基づく仮説を立てて解決策を見いだせるような力が必要です。そのためにはデータ分析などのデータサイエンスの手法が非常に有効なツールになります

このようにMDAPの学びを、学部で学ぶ専門領域と接続させながら総合大学としての多様な学びを通して、社会的ニーズと本学の人材育成方針の両方を実践していくことが本プログラムの狙いです」

MDAPは「リテラシーレベル」と「応用基礎レベル」に分かれます。入門編となるリテラシーレベルは初学者にも学びやすい内容になっており、初年度の21年度は1000人以上の学生が履修しました。23年度は3000人以上が履修し、年々、履修者が増えています。

「うれしい誤算でした。これは私たちが思っている以上に、学生たちが『大学での学びはもちろん、社会に出てからもデータサイエンスの知識が必要になる』ことをしっかり意識している証拠だと思います」(平山常務理事)

MDAPの授業画面。授業は全てオンデマンドで行われます。わからないところを繰り返し視聴できるのはもちろん、質問があれば、学習支援システムを通して教員とやりとりができるようになっています(写真=法政大学提供)

オープンバッジで学習成果を可視化 就職や進学にも活用

MDAPの授業は全てオンデマンドで開講しています。好きな時間に受けられ、かつ繰り返し視聴することができるなど自分のペースで学習を進められるのは、オンデマンド授業ならではのメリットです。また、修了要件を満たすと、「MDAPを学んだこと」を証明する「オープンバッジ*」というデジタル証明書が授与され、就職活動や進学に役立てることもできます。

「自身の学習の成果を証明することが大学の学びでも必要とされるようになってきています。オープンバッジは自分自身が何を学んだのかを可視化するツールの一つであり、対外的に自身の学習の成果を見せることで、就活や大学院進学の際に活用することができます。履歴書にも印刷できますので、うまく使ってもらいたいです」(平山常務理事)

*IMS Global Learning Consortium(IMS Global)が設定した国際技術標準規格。知識・スキル・経験のデジタル証明書

法政大学が発行するオープンバッジ(MDAP対象例)(画像=法政大学提供)

データサイエンスは現代の教養

データサイエンスを学ぶ組織として学部を新設する大学も多いですが、法政大学が学部横断の形でデータサイエンスを学べる教育プログラムを設けたのには理由があります

データサイエンスは現代の教養の一つだと考えています。MDAPを通して、データサイエンスの知識や技術を広く文理を問わず全ての学部生に履修してもらい、そのうえでそれぞれの専門領域に接続・応用することで大学での学びを深めてもらいたいです」(平山常務理事)

学部を問わず門戸を開く大学が続々

こうした動きは他大学でも見られます。

中央大学では、21年4月から文理を問わず全学部生を対象に「AI・データサイエンス全学プログラム」を始めました。リテラシーレベルから応用基礎レベルまで、所属学部の学びと並行して、学生が希望やレベルに合わせて履修できるようになっています。授業は基本的にオンラインで行われ、キャンパスを超えて他学部の学生と一緒に学ぶことで、学生にとっては新たな刺激にもなっています。

亜細亜大学では、所属学部での専門的な学び以外に、別の分野を学べる副専攻制度を20年に導入し、データサイエンス副専攻を開設しました。さらに23年4月に経営学部にデータサイエンス学科を新設し、ビジネス分野でデータサイエンスの知識を生かせる人材の育成にも力を注いでいます。

東京女子大学でも、副専攻制度に22年度からデータサイエンス分野を加えました。24年度からは、データサイエンス関連の科目を全学共通カリキュラムに組み込み、必修化する予定です。

各大学がデータサイエンス教育に注力する追い風となっているのが、文部科学省が内閣府や経済産業省とともに創設した「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」です。数理・データサイエンス・AIに関して体系的な教育を行う大学などの教育プログラムの中から、優れたものを認定・奨励しており、21年度から実施されています。

政府もデジタル社会のための人材育成を推し進めており、データサイエンスはこれからの社会を生きるうえで必要な素養の一つになっています。

(文=岩本恵美)

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