「私は平凡な人間で個性とかはないんです」

ある中堅企業での話。「新しいことに挑戦することが苦手な管理部門を変えたい」と考えた本部長が、スコラ・コンサルトに組織風土改革の依頼をしてきた。「受け身ではなく、積極的に時代の変化に対応できる組織にしたい」というのが目標だった。デジタル化などの流れが加速する中で、大きな変化に対応した上で社員がやりがいをもって働く環境を整える組織への脱皮を目指していた。
支援をすることになったスコラ・コンサルトの若山修さんは、選抜してもらった社員の人たちと最初のあいさつをした。本部長からは「この人たちは管理部門の中では、比較的に積極的な方々です」と聞いていた。
しかし、参加者に自己紹介をしてもらうと、「私は平凡な人間で個性とかはないんです」という趣旨の話をする人が相次いだ。こうした反応を受け、若山さんが改めて管理部門の管理職に聞いて見ると、「管理部門を希望する人たちはまじめだが、あまり会議で意見をいう人は多くない。他部門に比べ、控えめな人が多いです」とのことだった。
「ジブンガタリ」で浮かび上がってきたそれぞれの個性
そこで、若山さんはスコラ・コンサルトの手法の一つである「ジブンガタリ」を「やってみませんか?」と持ち掛けた。

「ジブンガタリ」とは、お互いのことを理解するために順番に自己紹介を行う、オフサイトミーティングⓇで用いられる手法のひとつだ。今回は6~8人ぐらいのグループで1人10分程度、自分について語った。その後の20分は、グループ内のほかの参加者たちが、自分について語った人に質問をして、その人の人柄や個性を引き出していく。あくまでもお互いを理解するために開催し、結論を出す会議ではない。
若山さんは、一人ひとりにじっくりと「ジブンガタリ」をしてもらった。会議を終えてそれぞれの参加者が理解したのは「みんな個性的である」ということだった。ある社員は、自分のこだわりで選んだハンカチやスカーフ、ジャケットを大切に長期間使っていることを語った。価格は高くても、「自分がいい」と思ったものを大切にする人だった。その価値観は両親から受け継いだものだった。
別の社員は、趣味でロッククライミングをやっていた。ふだんはあまり自分のことを語らない、おとなしい人だったので、参加者は驚いていた。さらに話を聞くと、週末にバスケットボールやアイスホッケーの応援を行うとてもアクティブな人だった。好みの食べ物も、人間関係も、趣味も好き嫌いがはっきりしている人だった。
このように、「ジブンガタリ」で話を聞いてみると、「個性がない」と主張してきた人たちに、それぞれ個性があることが浮かび上がってきた。そうすると、組織風土改革を行うために実施するオフサイトミーティングという会議のコーディネート役も、「実はこの人の方が適任ではないか」といった提案も出てくるようになった。若山さんによると、まずお互いの個性について知ることが、組織を変えるための大切な土台になるという。

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同僚のじぶんがたりを真摯に聞く、ということも大切なことなんだと思います。
ジブンカタリ。大発見かも!!(๑˃̵ᴗ˂̵)
思い当たるところが随所に。所属するサークルの新人さん×ベテランさん含めて、語る姿勢と聴く姿勢。新たな発見と共に結束力が強固になる気がしてきました!
よし、即・実践します!ありがとうございます!
対象としては、Z世代に聞いて日頃の事業に役立てています。結局、話をきくことで承認欲求がみたされるのかも。結果的に、距離を縮めることができています。とても興味深く読ませていただきました。
地方都市の情報系の会社で働いています。
じぶんがたりをじぶんの会社にあてはめて実行しようと思います。
中堅層や部下ができたばかりの若い管理職は、じぶんのことを話すまたひとの話を聴く。両方が必要で両方をほしがっているからです。
平常時の時間の中でそのきっかけや当番制で順番に話す。聴く。両方をおこなう。
個が際立つ風潮の中でたがいに知ることがおおげさではない等身大のチームワークを産む根っこにしたいと思います。