2025年4月21日号
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PROLOGUE
新浪会長が語った10年 ビーム統合が変身のきっかけに
サントリーホールディングス(HD)による米ビームの経営統合は10年がかりの大仕事になった。指揮を執った新浪剛史氏の改革は世界進出への起爆剤となり、会社の体質も大きく変わった。

PART1
米老舗会社買収の試練 背水の品質改革を主導 日米の「伝統」が激突
買収直後の米ビームは採算重視で品質への意識がおろそかになっていた。そこで品質にまつわる要素を“因数分解”。守るべきものを明確にした。非製造部門の幹部にも品質の重要性を説き、底力ある商品を下支えする。

PART2
“他流試合”が組織を鍛える 「勝ち筋」を積み重ね 厚み増す海外事業人材
文化も商慣習も異なる米ビームの統合作業を担ったのは日本人社員たちだ。手探りの面もあったが、徐々に成果を出す社員の条件が分かってきた。日本と海外を往復させてスキルを身に付ける新たなキャリアパスを描く。

PART3
東南アジア市場は日本式で開拓 タイでハイボール奮戦記 社内の異才が活躍
海外市場として注目しているのが東南アジア。目玉商品はハイボールとコーヒーだ。先遣隊として活躍するのは、グループ内でもまだ希少な海外事業人材。日本から飛び出すことで異才のチャレンジ精神が解き放たれた。

PART4
ビール、ノンアル、ジンで壁を破れ 国内酒類1兆円へ 鳥井新体制の正念場
2030年までに国内酒類事業の売上高を1兆円に引き上げる目標を掲げる。軌道に乗りつつある海外事業に負けじと、国内事業基盤の強化を急ぐ。マーケティングの刷新や新分野への挑戦が鳥井新体制の課題となる。

EPILOGUE
プロ経営者がつないだDNA
サントリーホールディングス(HD)は創業家の理念をグループ全体に浸透させて求心力にしてきた。創業家トップの空白期間を埋める格好になった新浪剛史会長による「リスペクト」がバトンをつないだ。

編集長インタビュー
サントリーHD社長鳥井信宏氏 世界的ブランドを育てる
新浪剛史前社長の後を継ぎ、11年ぶりに創業家に経営のバトンが戻ってきた。創業家出身の6代目社長が目指すのは「世界的なブランド」を持つ商品の育成。悲願のグループ全体売上高4兆円に向けて、さらなる成長に挑む。

校了乙
4月21日号特集「サントリー転生」を担当記者が解説
4月21日号特集「サントリー転生」の読みどころを、担当した朝香湧記者が3分間で解説する。

聞く校了乙
4月21日号特集「サントリー転生 新浪改革、世界で『やってみなはれ』」を朝香湧記者に聞く
日経ビジネス最新号の特集の読みどころを耳で聞く校了乙。4月21日号特集「サントリー転生 新浪改革、世界で『やってみなはれ』」の読みどころを、担当した朝香湧記者に聞きます。
PROLOGUE
第2特集
人
連載

連載小説「チップス」
真山仁「チップス/ハゲタカ6」 第6章 風の前の塵(10)
サムライ・キャピタルのMDからの面談の申し入れを、大谷は即座に断ろうとした。だが、頼田が止めた。「用件は?」会長秘書は、「伺っておりませんが、ぜひ、お会いになるべきだとおっしゃっています」と返した。

BOOK
楠木建氏が読む『プライズ』~創作の仕事の本質が見えてくる小説
本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに直木賞にはあと一歩で手が届かない。「どうしても直木賞が欲しい」──ひたすら栄誉を追い求める作家・天羽カインの強欲を描く。意図的にイヤな気持ちになりたいために本を読む──僕が好物としている「特殊読書」だ。普段はノンフィクションでこれをやるのだが、特殊読書家の嗅覚で本書が気になった。
世界鳥瞰

The Economist
自動車大手、トランプ関税にジレンマ 米国生産は関税以上のコストも
米国はすべての輸入車に対する25%の追加関税を発動し、輸入部品にも2025年5月から課税を開始すると発表。自動車メーカーはコストの上昇分を価格に転嫁するか、供給網を再編するかなどの難しい決断を迫られる。生産の米国回帰には関税以上のコストがかかる場合がある。しかも関税がこのまま続くか分からないのだ。

The Economist
地震に乗じるミャンマー軍政 世界に救援求め、反政府組織には攻撃
大地震に襲われたミャンマーの軍事政権は、世界に救援を求める一方で反政府武装勢力に攻撃を加えた。その後一時停戦を発表したものの、非支配地域への救援物資搬入を妨害するなど状況を悪化させている。しかし最近、国際社会は軍事政権を認めつつある。地震を契機に非人道的な支配が強化されかねない。
時事深層

専門記者の眼(賃金制度)
ソニーグループ、冬の賞与を廃止 じわり広がる「賞与の給与化」
年収に占める賞与の割合を縮小させる動きが出ている。代わりに給与を手厚くすることで人材を引き付けられるという。賞与の給与化は、日本の報酬制度が転換期にあることを示唆している。

プロの洞察 (特許分析)
宇宙ロケット開発の特許 中国目立つが、安全保障の影響も
特許情報を分析すると、世界のビジネスの未来が見える。今回は宇宙ビジネスの礎となるロケット関連技術の特許について分析してみよう。この分野では中国の躍進が目立つが、安全保障上の制約が特許戦略にも影響している面がある。

GLOBAL
アップルCEOも熱視線 新興AI企業に沸く中国杭州
米アップルのティム・クックCEOが3月下旬に中国を訪問。中国政府に加えて訪れたのが杭州市だった。同市はDeepSeekなど新興テック企業が勃興し、6社は「杭州六小竜」と呼ばれ注目を集める。中国経済が低迷する中、再成長のけん引役になる可能性を秘める。

トランプ関税ショック
トランプ政策「追い風」に 地政学リスク分散 JERA、米国産LNGの調達拡大へ
JERAは米国産LNG(液化天然ガス)の調達を拡大する方針だ。トランプ政権が掲げる天然ガスの増産計画を好機と捉えた。調達先の分散化で地政学リスクを抑え、電力の安定供給につなげる。

トランプ関税ショック
トランプ自動車関税、「賃上げが犠牲にも」 部品会社の命運握る自動車大手
トランプ米政権が開始した輸入自動車などへの25%の追加関税に、日本の自動車業界から悲痛な声が上がっている。ある自動車部品メーカーは「製造業の利益率からすれば耐えられない関税率だ」と憤る。部品メーカーなど、6万社超といわれる自動車の供給網に及ぶ直接的、間接的な影響は甚大だ。回復基調にある日本経済に冷水を浴びせる「トランプ関税」のツケは、誰が払わされるのだろうか。

トランプ関税ショック
米自動車関税、25%引き上げ 割を食う日本、試される交渉力
ある在米日系自動車部品メーカーの社長を取材すると、「石破氏に(減税に向けた交渉)は無理だ」と言い放った。24%の相互関税と25%の自動車関税の撤廃を勝ち取るにはトランプ氏の「真の目的」を理解することが欠かせない。その目的とは何か。また、交渉が長期化した場合、被害を最も受けるのは誰か。米国関税データを分析した。

TRANSPORT
JR企画乗車券の廃止・改定相次ぐ 新「青春18きっぷ」にファン落胆
「乗り鉄」に受難の時代が到来か。「青春18きっぷ」に代表される乗り放題タイプの企画乗車券が姿を消したり、“改悪”されたりするケースが目立つ。背景には、電子チケットへの対応や、省力化への取り組みがある。

COMPANY
牧野フライスにTOB強行 ニデック、“劇薬”で見切り発車
ニデックが、2024年12月末に突然発表した工作機械大手・牧野フライス製作所へのTOB(株式公開買い付け)に、4月4日踏み切った。両社のこれまでの交渉は平行線に終わり、見切り発車のような形となった。牧野フライス側は当初から不快感を鮮明にし、3月にはニデックの買収を極めて難しくする対抗策も策定。ニデックは事実上の買収防衛策と反発する。事前申し入れがなく、同意もない買収提案が、日本のM&A(合併・買収)の新たな方策となるのか。なお曲折がありそうだ。
EPILOGUE

ニュースを突く
再生エネの投資意欲減退 EUの「脱炭素失敗」を他山の石に
再生可能エネルギーの拡大を訴えてきたEUの投資意欲が減退。かつて批判の対象だった米国を引き合いに、自らの課題点を挙げた。

編集長の視点/取材の現場から
サントリーが示した「JXC」の道
「響」や「山崎」といった日本のウイスキーブランドを米国で売るのではなく、いかに地元のバーボンでお客様に喜んでもらえるのかを考える文化をつくることが大切だった──。サントリーホールディングスの新浪剛史会長は以前、米ビームとの統合についてこう語っていました。その上で、理念の共有を含め「統合には5年かかった」と振り返ります。

賢人の警鐘
トランプ貿易戦争で米ドル下落 緩やかな円高なら日本にプラス
2025年が始まってから、円は対米ドルでいくらか価値を取り戻している。米国のドナルド・トランプ大統領が日本を含むすべての国々に対して貿易戦争を開始したことによって、企業は今後、円が対ドルで大幅に強くなるシナリオを真剣に考慮する必要がある。