ミーク・ミル

ミーク・ミルは、勝ち続けている時ですら人生をバトルのように捉えるタイプのラッパーだ。あるいは、2012年にリリースされた『Dreams and Nightmares』の最初の曲での彼自身の言葉を借りるならば、「俺は100万ドルの札を数えた後、まるで金欠みたいに働くタイプ （I'm the type to count a million cash then grind like I'm broke）」とも言える。奮闘と成功を繰り返すという彼の音楽のテーマは目新しいものではないが、メインストリームで活躍しながらも、ストリートアーティストの切迫感を維持し続けることで独自性をもたらしている。1987年に生まれ、北フィラデルフィアで育ったミル（本名Robert Rihmeek Williams）は、地元のヒップホップグループ、The Bloodhoundzで活動を始め、この街の危険なバトルシーンでスキルを磨いた。後にソロとして一連のミックステープを発表し、やがてT.I.のレーベル、Grand Hustle Recordsに迎え入れられた。その後、銃とドラッグの所持で逮捕され、懲役7か月の判決を受けて活動休止を余儀なくされたミルは、2011年にリック・ロスのMaybach Music Groupと契約してシーンに復帰し、リック・ロスとコラボレーションした「Ima Boss」「Tupac Back」で話題を集めた。自宅軟禁と刑務所生活による中断期間はあったものの、2010年代を通してミルは曲を発表し続けた。彼の逮捕の理由の多くは、2007年の最初の逮捕に由来する仮釈放違反だったが、この事件はアーティストや活動家から広く関心を集め、ジェイ・Zはニューヨーク・タイムズに論説を寄稿した。そして2018年、ミルを逮捕した警官が事件を誤って処理した可能性があることが発覚し、ミルは釈放され、10年に及ぶ厳しい試練に終止符が打たれた。こうした経験を通して、ミルは復活を遂げたアーティストとしての地位を確立した。“熱烈なドラマ感覚でストリートのストーリーを語るクラシックラップの情熱的なアンバサダー”。それは彼自身の言葉だが、本気だろう。