ハンス・ジマー

1995年に『ライオン・キング』でアカデミー賞®作曲賞に輝き、2022年には『Dune（邦題：DUNE／デューン 砂の惑星』で再び同賞を受賞したハンス・ジマーの名前は、幅広いスタイルやジャンルにわたる150本以上の映画のエンドロールにクレジットされている。1957年にフランクフルトで生まれたジマーが映画音楽の作曲家を志すようになったきっかけは、セルジオ・レオーネ監督によるイタリア製西部劇のためにエンニオ・モリコーネが書いた音楽を聴いたことだったという。1980年代には映画音楽で知られるイギリスの作曲家スタンリー・マイヤーズの下で、電子音とオーケストラの音世界を一体化させる方法を学んでいる。ジマーはその後もこの手法を生かし、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズに代表されるように、典型的なハリウッドスタイルのサウンドトラックを多く手掛けてきたが、例えば、クリストファー・ノーラン監督のSF映画『Inception』（2010年）では、エディット・ピアフの「Non, je ne regrette rien」を物語に合わせて絶妙にスロー再生して再構築するなど、実験的な試みも行っている。また、トニー・スコット監督の『True Romance』（1993年）のメインテーマは、さまざまな打楽器を使った遊び心あふれる楽曲となっており、ジマーが多彩な音楽性を持つ作曲家であることを証明した。さらには、『Thelma & Louise』（1991年）でスライドギターを披露したPete Haycockや、『グラディエーター』（2000年）で心を揺さぶる歌声を聴かせたリサ・ジェラルドなど、コラボレーターの魅力を引き出すことにも長けている。