コース: 財務の基礎
例:香港での車の購入
[ケイ]資本予算策定の実際の例を お話しします。 私が妻と香港に引っ越した時の話です。 私たちは車を買うべきか考えました。 検討していた車の価格は 4万香港ドルでした。 8香港ドルが約1米ドルなので、 5千米ドルほどです。 高級な車ではありません。 週末に家族で出かける時に、地下鉄や バスの料金を節約するための車です。 節約できるのは 年に約1万香港ドルと計算しました。 その車の耐用年数は5年ほどと見積り、 家族の資本コストとして 10%を使いました。 ここで資本予算を策定し、決定を下します。 スタイス家はこの車を買うべきでしょうか。 私たちはまず、回収期間を計算しました。 この車を買うのに4万香港ドル支出し、 1年に1万ドル節約できるなら、 投資コストを4年で回収できます。 これが回収期間です。 次に、現在価値を計算して、 この車を評価します。 この車は現在4万香港ドルです。 今後5年間、毎年1万ドル節約できます。 金利が10%とすると、5年間にわたる 毎年1万ドルの節約の現在価値は 37,908ドルです。 この数値は、電卓やExcelで計算できます。 計算上では簡単に決断できそうです。 この車は4万香港ドルです。 この車を買った場合に節約できるのは、 現在価値で37,908ドルです。 つまり、4万ドル支払って、 37,908ドル節約できます。 この2つをあわせると、 マイナス2,092ドルです。 この数値は車の正味現在価値、 NPV(エヌピーブイ)と 呼ばれるものです。 この車のNPVは マイナス2,092ドルです。 この車を買うと決めた瞬間に、 現在価値で2,092ドル 失うことになります。 この車を買うべきでしょうか。 正味現在価値はマイナスです。 財務上最悪と言えるのは、 正味現在価値が マイナスになるプロジェクトです。 たとえば、あなたが私にお世辞を言うなら、 こう言ってください。 「先日あなたの息子さんと話しましたが、 彼の正味現在価値はプラスですね」 私にとっては最高の誉め言葉です。 数値はこの車は買うべきではないことを 示していますが、最終的には 自分で判断する必要があります。 金額に表れないメリットも考慮した上で 結論を出すべきです。 私と妻はこれらの数値を見て 車を買わないことに決めましたが、 数年たって考えると、 これは間違っていたと思います。 香港の美しい海や山を訪れる際の 移動の柔軟性など、 お金とは関係のないメリットを 十分に考慮しませんでした。 金額には反映されないメリットも 検討すべきでしたが、 実際には数値だけを見て 決めてしまったのです。 資本予算の策定などで決定を下す時には、 数値は意思決定プロセスの始まりに 過ぎないということを 覚えておいてください。 数値を算出した後は、お金とは 関係のない要素を考慮しましょう。