大阪万博で「胎児に戻る」 土佐尚子・京都大学教授のアート作品で浮遊体験 常設展示

「Zero Gravity Art」は、土佐さんとTOPPAN、島津製作所の共同研究によるもので、大阪・関西万博のパビリオン「フューチャーライフヴィレッジ」で常設展示される。
「胎児体験」をしてみた。高さ約2メートル、幅1メートルほどの電話ボックスぐらいの大きさの六角柱のカプセルで、1人入るといっぱいの広さだが、全面鏡張りになっているので広く感じられる。
ヘッドホンをつけてドアを閉めると、鏡とディスプレーに囲まれた真っ暗な空間で、そこに絵の具のようなものが次々と浮かび上がる不思議な映像が映し出される。ヘッドホンからは、母親の心臓の鼓動のような音が聞こえてくる。なるほど、ふわりと浮かんでいるような感覚になる。
カプセル内に映し出される映像は、土佐さんのアート作品「サウンドオブ生け花」だ。絵の具などの液体をスピーカーの上におき、音の振動を与えると跳びあがる。それを1秒間に2000コマのハイスピードカメラで撮影すると、色とりどりの液体が生き物のように動く映像が記録される。それを今回は、無重力空間で撮影したため、より絵の具が浮遊するような映像に仕上がったという。
「胎児体験」は約7分間で終了。万博では、島津製作所がつくった脳の血流などを測るバンドのような機器「NIRS」を頭につけることで、体験後に鑑賞中の脳活動の反応を見ることができる。土佐さんは「お母さんのおなかの中にいたころの疑似体験ができるこの装置は、万博のテーマである『いのち輝く未来社会のデザイン』を具現化したものです」と話している。
会場には、TOPPANのバーチャルリアリティー技術によって土佐さんのアート作品の中に入り込めるような体験ができる「Tosa Art Museum」も展示される。
展示スタッフが着る制服は、「サウンドオブ生け花」をセイコーエプソンのインクジェットプリンターを使った「デジタル捺染(なっせん)」技術で生地に直接プリントしたものだ。土佐さんがデザインした服は、世界4大コレクションの一つ「ニューヨーク・ファッションウィーク」で2023年9月から毎年2月と9月に披露されており、そのコレクションの中から好評だったデザインを制服に選んだという。
「Zero Gravity Art」の詳細は、ホームページで。