苦手科目から逃げて、全落ちで浪人 「散歩しながら暗記学習法」で、早稲田大に合格

2025/04/07

連載:わたしの浪人生活

神奈川県の私立高校出身で、1浪して早稲田大学教育学部に入学した田中宗太郎(そうたろう)さん。現役の時は苦手科目を放置したせいで、受けた大学はすべて不合格。一念発起して勉強し、早稲田大学教育学部に合格しました。合格までの道のりや浪人生活、受験についての思いを聞きました。(写真=浪人時代に気分転換のために歩いた道、田中さん提供)

現役時代はどこも受からなかった

――現役の時は、どのような受験でしたか。

本当に勉強していなくて、1日1時間勉強すれば「もうやった」という感じでした。それでも模試では判定が良く、第1志望の北海道大学でC判定も取ったことがあるほどだったんです。実は歴史の面白い動画にはまって日本史の偏差値が70以上あったので、今思えば、その得意な社会と国語で引き上げられていただけだったんですよね。秋以降はD判定やE判定になりましたが、大丈夫だろうと過信して、苦手な英語は放置したまま。結局、本番で英語はどこも1、2割しか解けませんでした。

――北海道大学を第1志望にしたのはなぜですか。

北海道大学は、動画で美しいキャンパスを見て感動し、ここに行きたいと思ったのがきっかけでした。ほかには特に行きたい大学も学部もなかったので、私立大学は適当に名前を知っている大学を選び、早稲田大学の商学部と社会科学部、明治大学の文学部と情報コミュニケーション学部と経営学部、上智大学の文学部を受験しました。北海道大学は大学入学共通テストの結果であきらめて千葉大学に変更しましたが、結果はすべて不合格でした。

――それで浪人することになったのですね。

とにかく勉強していなかったので、これで終わるわけにはいかないと考え、父に「浪人させてください」とお願いしました。「どこも受かっていないのだから仕方ない。頑張りなさい」と言ってくれました。

英語の偏差値は20台から58に

――浪人の1年間はどのように勉強していましたか。

文系が強い予備校に通い始めました。それまでとにかく勉強する習慣がなかったので、最初はとりあえず予備校の授業だけ出て、帰ってきたら地元の先輩と遊んだり、友人と電話したり。でも、6月の模試の結果がなぜか良くて、うれしくてそこで勉強のスイッチが入りました。それからは毎日、授業後も21時まで自習室で勉強し、チューターに勉強法のアドバイスをもらうようになりました。

――どんなアドバイスをもらったのですか。

主に苦手な英語の勉強法です。一つの長文問題を何度も読んで解いて完璧にするということを繰り返して、「完璧」を増やしていくという方法でした。これは役に立ちました。ただ、自分には集中力と継続力が足りないこともわかっていたので、毎日必ず英語に触れると決めて実行しました。その結果、偏差値20台だった英語は58まで上がりました。

――集中力と継続力をつけるために工夫したことはありますか。

散歩です。じっとしているのが苦手なので、勉強の区切りのいいところで予備校を出て、ぶらぶらしていました。それを続けるうちに気づいたのは、僕は動き回っていたほうが、暗記がはかどるということ。英単語などを頭に入れた後に脳の整理時間として散歩し、英単語や日本史の用語などを覚えました。気づいたら2時間とか、長いときは4時間ぐらい街中を歩き回ったこともありました。さすがに4時間は長すぎましたね(笑)。

受験勉強の気分転換で歩くうちに4時間くらい経っていたことも(写真=田中さん提供)

――大変だったことや、つらかったことはありましたか。

早稲田大学の入試は、英検のスコアで加点されたり、英語の試験が免除されたりする制度を利用しようと考えていたのですが、12月の入試前最後の英検の試験日にコロナにかかってしまって……。その後、しばらく勉強できなかったことで焦りがつのり、気持ちが不安定な状態になってしまいました。予備校にも行けず、勉強もできずという状態でした。入試直前になって、なんとか予備校へは行けるようになりましたが、成績が下がった状態で共通テストを迎えることになったことがつらかったですね。

周囲に感謝し、最後まであきらめない

――そんな大変な状況で迎えた受験だったのですね。

とにかく済んだことは忘れることにして、ここからできることをしようと思いました。チューターが親身になって受験校を一緒に考えてくれて、北海道大学総合入試文系のほかに、私立大学の一般選抜で早稲田大学教育学部と商学部、明治大学経営学部、法政大学文学部、青山学院大学文学部を、共通テスト利用で明治大学農学部と東洋大学経済学部を受験しました。その結果、早稲田大学教育学部、法政大学文学部、青山学院大学文学部、明治大学農学部、東洋大学経済学部に合格しました。

――合格した時はうれしかったでしょうね。

喜びより安心のほうが大きかったです。支えてくれた親や友達にいい報告ができるというのと、これで浪人生活が終わるという安堵感ですね。

ただ、せっかく憧れの北海道大学まで試験を受けに行ったのに、あと一歩届かず、早稲田大学への進学を決めました。ちなみに北海道大学の2次試験は、ほとんどが漢字ミスによる失点でした。ちゃんと見直しをしていたら今ごろ北海道にいたかもしれないと思うとちょっと悔しいですが、これも縁かなと感じています。

現役時に早稲田大学の入試会場で売っていたカレー弁当のおいしさが忘れられず、浪人時も並んで買った(写真=田中さん提供)

――早稲田大学での学生生活はいかがですか。

個性的な人がたくさんいて楽しいです。主に国文学を勉強していますが、最近、漢文をはじめとする昔の文学を読む楽しさに目覚めました。いろいろな大学の学食を食べ歩く学食研究会や、グライダーを操縦する航空部に入り、その活動も楽しんでいます。

――浪人して得たものはありますか。

家族や友人に支えられているという実感と、努力すれば苦手なこともできるようになるという自信です。浪人生の中にはバイトしながら勉強している人が少なくなかった中で、両親は弁当まで用意して勉強に専念させてくれたり、最後は「行きたいところに行っていいよ」と言ってくれたりして、本当にありがたかったです。それから、お守りをくれたり、毎日のように電話で励ましたりしてくれた友人、寄り添ってくれたチューターにたくさん支えてもらいました。浪人生活は周りの人への感謝があふれ、さまざまなことを考えるきっかけになりました。

――最後に受験生にメッセージをお願いします。

僕は、大学のことを調べたりせず、入試で入りやすそうな学部を選んで受験しました。今はとても楽しいので結果オーライですが、もし合わなかったら4年間は地獄だったなと思います。できれば学部はちゃんと選んだほうがいいと、これから受験する人には言いたいです。

あとは、成績が思うように伸びなくても、最後の最後に伸びたりするので、最後まであきらめずに勉強することです。そして受験本番では見直しを怠らないで、と伝えたいですね。

>>【連載】わたしの浪人生活

(文=出村真理子)

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【写真】苦手科目から逃げて、全落ちで浪人 「散歩しながら暗記学習法」で早稲田大に合格

受験勉強の気分転換で歩くうちに4時間くらい経っていたことも(写真=田中さん提供)
受験勉強の気分転換で歩くうちに4時間くらい経っていたことも(写真=田中さん提供)

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