魂を彫り込む 永瀬正敏が撮った宮崎(311)
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回も宮崎での一枚。作品に刻まれたものとは?

魂を彫り込む。
全ての作品に魂が刻み込まれている。
職人さんのプライドと技術とともに。
この神楽(かぐら)面の職人さんの作品もそうだ。
神事に使うこの大事な面には、
相当な思いがこもっている。
ただ単にうまく彫る技術を習得して、
大量に制作するものでもない。
歴史を重ね、そろそろその役目を終える、
歴代の面たちに敬意を示しながら、
新たな命を吹き込み、
出来上がった作品を舞手さんとともに、
神様の前で披露する。
伝統を引き継ぐ覚悟と、
絶やしてはいけないという使命感も含め、
ひと彫りひと彫り刻み込んでいく。
その職人さんの姿はとても尊かった。
静かな、しかもしっかりとした音を響かせ、
凛(りん)とした瞳で手元のまだ何者でもない木に、
向かい合う。
手元で展開するその厳かな動きを、
カメラに収めることができたことに、
感謝した。
〜宮崎にて〜

今回の神楽面の職人さんも作品に対して一切の妥協は許さないで作られているんですよね。
こういう過程は普段では知り得ないので連載を見て・読んで本当に勉強になります。
「手元で展開するその厳かな動きを、カメラに収めることができたことに、感謝した」
永瀬さんが撮る職人さんの写真に敬仰の念を感じるのはこの心があるからなんだと改めて感じました。
お面はちょっとおどろおどろしい。
いっぽうで、幼いとき神社の祭りでほしかったものはセルロイドのお面だった。
人の表情や顔つきにひかれ、対する相手の気持ちまで想像してしまうような日常はもしかしたらじぶんの気持ちの鑑なのかもしれない。