宇賀なつみ わたしには旅をさせよ
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人生最高地点の絶景と、青と白のウユニ塩湖  宇賀なつみがつづる旅 (65)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。南米を旅する宇賀さんが今回足を踏み入れたのはボリビアです。

「同じ旅人 ボリビア」 

ボリビアは、ペルーに比べるとなんだか寂しい。 
そんな第一印象だった。 

道路の整備も完璧とはいえないし、野良犬がそこら中をウロウロしている。 
空港ではたくさんのアジア人と一緒だったのに、 
街中で見かけることはなかった。 
きっと、ウユニ塩湖へ行くための乗り継ぎに利用するだけなのだろう。 

アンデス山脈を削るように、すり鉢状になっている都市ラパス。 
こんなところに、たくさんの人が暮らしているというのが不思議だ。 
タクシーで中心地に下りていく途中、 
頭上を次々にケーブルカーが行き交っていることが気になった。 

ホテルに荷物を預けて、早速近くの駅まで行ってみる。 
街中を張り巡らすように作られたケーブルカーは、 
一回乗ると、一人3Bs(ボリビアーノ)で70円ほど。 
驚くほど安かった。 

上から見下ろすと、街の作りがよくわかる。 
中心は高級住宅街やオフィス街で、 
プール付きの豪邸の真上を横切ることもあった。
大きな公園や学校を眺めながら上っていくと、 
だんだん小さな家が目立つようになる。 
大きな袋を抱えて、急な階段を上り下りしている人が見えた。 

地元の人たちは、この景色に慣れきっているのだろう。 
私にとっては、通り過ぎてしまうのが惜しいくらい、興味深いものばかりだった。 

人生最高地点の絶景と、青と白のウユニ塩湖  宇賀なつみがつづる旅 (65)

終点まで着くと、そこからまた違う色のケーブルカーに乗り換えた。
見える限り一番高い駅まで着いて、 
スマホで位置情報を調べると、なんと標高は4000メートル。 
人生最高地点に、いつの間にか到達していた。 

駅の中に併設されていたファストフード店で、 
チキンとコーラを買い、窓際の席に座った。 
特に動いていないのに、少し息が切れる。 
絶景を眺めながら少しずつ飲むコーラは、これまでで一番美味しかった。 

とんでもないところまでやってきたんだなぁ…。 
そのまましばらくぼんやりした後、 
今度はケーブルカーからの夜景を楽しみながら、ホテルに戻った。 
途中、観光客らしき若い男性と一緒になり、軽く挨拶を交わす。 
彼も夢中で動画を撮影していた。 
この街は、全てがテーマパークだった。 

翌朝、ついにウユニ塩湖へ向かった。 
個人で勝手に行くことはできず、ツアーに参加しなければいけないので、 
まず事前に予約していたツアー会社を訪れた。 

受付を済ませてしばらく待っていると、急に名前を呼ばれた。 
どうやらグループ分けをされていたようで、 
カナダから来た初老の女性、アメリカ出身で世界中を旅しているという男性、 
イギリスの若いカップルと輪になって、簡単な自己紹介を済ませる。 
その後、指定された古い四駆に乗りこんで、いよいよ出発した。 

蒸し暑い車内で繰り広げられる英語の会話に、必死でついていこうとしていたら、 
あっという間に最初の目的地に着いていた。 
かつて、塩湖近辺で採掘された鉱物を運んでいた列車が、 
敗戦により廃れて放棄されたままになり、今では有名な観光地になっていた。 

その後昼食を済ませて、ついに塩湖へ入る。 
ガリガリという、タイヤが塩を踏む音を聞きながら、 
どこまでも続く青と白を眺めていた。 
途中で停車するたびに、それぞれ散らばって、好き勝手に写真を撮った。 

人生最高地点の絶景と、青と白のウユニ塩湖  宇賀なつみがつづる旅 (65)

本来なら雨季にあたるので、塩湖に水がたまり、 
水が鏡張りになって空を映すところが見られるらしいが、
異常気象の影響なのか、全然雨が降っていないそうで、水はほとんどなかった。 

白い平原は遠近感がなくなるので、皆がどれくらい遠くにいるのかわからない。 
広い世界を、独り占めしているような気分になった。 

その後、インカワシ島に立ち寄った。 
塩湖には無数の島があるが、 
唯一観光客が上陸できるこの島は、売店もトイレもあって快適だった。 

強い日差しと乾燥で疲れ果ててしまっていたので、 
早速ビールで喉を潤したが、ここは標高3700メートル。 
やはり酸素が薄いので、なかなかお酒が入っていかない。 
それでも、ゆっくり味わった。 

日が傾き始めると、ガイドが車を停めて、テーブルをセッティングしてくれた。 
少しずつ色が変わっていく空の下、皆でワインを開けて乾杯する。 
出会ったばかりなのに、もうすっかり仲間だった。 

人生最高地点の絶景と、青と白のウユニ塩湖  宇賀なつみがつづる旅 (65)

落ちていく夕日をワイングラスの中に閉じ込めて、幸せを噛み締めた。 
世界中に美しい夕日があり、同じような旅人がいる。 

そう思うとなんだかホッとして、残りのワインを一気に飲み干した。 

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