出典: フリー多機能辞典『ウィクショナリー日本語版(Wiktionary)』
- 甲骨文字に見られる原字「[⿻女丶]」は、跪いた人を象る「女」とその臀部付近に添えられた深く腰掛けることを示す(またはは敷物や腰掛けの類を象る)筆画から構成される。のち「宀」(家屋)を加えて「安」の字体となる。「座る」を意味する漢語{安 /*ʔaan/}を表す字。[字源 1]
- 『説文解字』では「宀」+「女」と説明され、女性が家の中で落ち着くさまと解釈されているが、これは誤った分析である。甲骨文字[字源 2]や金文[字源 3]の形を見ればわかるように、この文字の下側の部分は「女」とは異なり、後漢の時代に字形が省略されて“女”と書かれるようになったに過ぎない。
- 甲骨文字には「[⿻女丶]」+「宀」からなるこの字と、これに字形がよく似た「𡧊(賓)」の異体字(「女」+「宀」からなる)が存在し、古い学説ではこれらが混同されていた。
- ↑ 陳剣 「説“安”字」 『語言学論叢』第31輯 北京大学漢語語言学研究中心《語言学論叢》編委会編、商務印書館、2005年、349-363頁。
葛亮 「古字新識(十二)——説“安”“家”」 『書与画』2020年12期、60-62頁。
徐超 『古漢字通解500例』 中華書局、2022年、1-2頁。
- ↑ 劉釗主編 『新甲骨文編(増訂本)』 福建人民出版社、2014年、442頁。
- ↑ 張俊成編著 『西周金文字編』 上海古籍出版社、2018年、392頁。
- (アン)安らかなこと。
- 不仁者不可以久處約,不可以長處樂。仁者安仁,知者利仁。(『論語』)
[不仁者は以て久しく約に処るべからず。以て長く楽に処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利す。]
― 仁者(=仁徳を備えた人)でないものは、(そのせいで)長く倹しい生活ができない。長く安楽な生活をすることもできない。仁者は仁(の生活)に安んじ、知者は仁を活かす。
[嗟乎、燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや]
― ああ、燕や雀のような小鳥に、どうしてオオトリやクグイのような大きな鳥の志がわかろうか、わかりはしない。
安 *
- 同根と推定される語
- 上古中国語[語源 1]
- { 按 }:/*ʔˤa[n]-s/(=手で押さえる)
- { 案 }:/*ʔˤa[n]-s/(=手を置く)
- { 鞍 }:/*[ʔ]ˤa[n]/(=腰かけ)
- ↑ Axel Schuessler, ABC Etymological Dictionary of old chinese, University of Hawaii Press, 2006, p.150
字典掲載
康熙字典 |
282ページ, 8文字目 |
諸橋大漢和辞典 (修訂第2版) |
7072 |
新潮日本語漢字辞典 (2008) |
2528 |
角川大字源 (1992) |
2040 |
講談社新大字典 (1993) |
3451 |
大漢語林 (1992) |
2481 |
三星漢韓大辞典 (1988) |
552ページ, 5文字目 |
漢語大字典 (1986-1989) |
2巻, 913ページ, 9文字目 |